菅野沖彦氏のスピーカーのこと(その13)
1996年12月に発売になったラジオ技術 1997年1月号には、ある特殊なスピーカーのことが記事になっていた。
記事のタイトルは、
イギリスからやって来たスピーカの革命児
〝曲げ振動〟を制御するNXTシステムとは
である。
4ページのインタヴュー記事で、
まず、このNTXシステムを完成させたイギリスのヴェリティ(Verity)研究所であり、
このNTXシステムを普及させるためにつくられた会社、New Transducers Ltd、
この会社の副会長ノーマン・クロッカー、技術担当重役ヘンリー・アズマ両氏が登場する。
記事の最初に登場する図は、
QUAD ESL63の振動板の様子を捉えたもの、
その下にはNTXシステムの振動板の様子を捉えたものが載っている。
ESL63はご存知の通り中高域以上に関しては、
同心円状に電極を配置し、それぞれの電極に異る時間差を与えることで、
疑似的な球面波を実現したものである。
ESL63の図はきれいな波紋ができている。
一方のNTXシステムは、いくつもの山谷がランダムにできている。
しかも山の高さ、谷の深さは均一ではなくバラバラである。
何の説明もなく、この二枚の図を見せられたら、
NTXシステムのほうは、分割振動を捉えたものと勘違いしそうになる。