Date: 8月 10th, 2013
Cate: 菅野沖彦
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菅野沖彦氏のスピーカーのこと(その11)

振動板がピストニックモーションからはずれて、脹らんだり縮んだりするのであれば、
逆のこの現象を積極的に利用すれば、ソフトドーム型は呼吸体のような発音方式になるのではないか、
そんなことを考えたこともある。

そのためには伸縮性に富む柔らかい素材でなければならないし、
実際に振動板と磁気回路との間の空間の空気圧の影響を逆手にとることがそううまく行くとは思えない。
でも、ひとつの可能性として、ソフトドーム型だから、それも口径の小さなトゥイーターであれば、
呼吸体の実現も考えられないことではないはずだ。

私が考えつくことだから、誰かがすでに考えていたのではないか、と調べてみれば、
ビクターのSX3のトゥイーターが、まさにそうだった。
40年も前に出ていたわけだ。

当時のSX3の広告をみれば、このことについて触れてあるし、測定結果も載っている。
だからといって、トゥイーターが受け持つすべての帯域において、
ビクターが広告で謳っているとおりに動作しているわけではない、とも考えられる。
それでも振動板を正確に前後に振動させるというピストニックモーションにだけとらわれることなく、
音を出すということを捉え直したビクターのスピーカー・エンジニアリングは高く評価したい。

そして思うのは、同じドーム型の振動板をもつとはいえ、
ソフトドームとハードドームとでは、振動板そのもののモードを考えると、
まったく同じには捉えることはできないものということである。

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