シフのベートーヴェン(その3)
1980年代のある時期、アンドラーシュ・シフのCDを、
グレン・グールドよりも集中して聴いていた。
シフは1953年生れだから、グールドよりも21若い。
当然、その分だけ録音も新しい。
新しい録音による魅力も、シフのCDにはあったから、よけいに集中して聴いていたところもある。
グールドの演奏は、人によっては、受け入れらないという面があるようだ。
私にはそれはないのでなんともいえないけれど、
グールドについて否定的な人もいることは知っている。
シフの場合はどうだろう。
これも想像でしかないのだが、グールドを否定するような意味でシフで否定する人はいないような気もする。
だからシフの演奏はつまらない──、ということにはならない。
そんなレベルでの、シフの演奏ではない。
そうであったらシフの演奏に夢中になるわけがない。
素晴らしいピアニストだと思う。
なのに、ふと気がつくと、シフのCDをかけることがなくなっていた。
そうなるとシフの新譜にも関心が薄れていく。
実はシフがECMに移ったことも知らなかった。
「気に入ると思って」という言葉とともに、シフのゴールドベルグ変奏曲の新録のCDをもらったとき、
懐かしいな、というおもいだけだった。