舌読という言葉を知り、「きく」についておもう(その3)
トレースすることで「読む」ことが始まる本もまた、
トレースすることによってつくられている、といえる。
いまは手書き原稿の方が比率としては少なくなっているだろうけど、
パソコン、ワープロの登場・普及以前は、みな手書き原稿だった。
原稿がそのまま写植にまわされることはまずない。
まず担当編集者が目を通す。必要とあれば朱をいれる。
これもまた編集者の目によるトレースである。
そして写植にまわされる。
ここで写植の職人によるトレースがおこなわれ活字が並べられていく。
写植があがってきたら、校正というトレースが行われる。
いくつかのトレースを経て本は世に出て、
読み手によってトレースされていく。