598というスピーカーの存在(その18)
10万円のアンプでネジを一本増やすのに稟議書、という話は1980年代半ばごろの話であって、
時代が違えば、それに同じ1980年代でもメーカーが違えば、こまかな事情は少しは違ってくるだろう。
とはいえ大量生産される製品ほどコスト管理は非常にシビアだということがわかる。
1980年代半ばごろといえば、598のスピーカーシステムも同時代のものであるわけだから、
10万円のアンプよりも定価の安い598のスピーカーシステムともなれば、
もっとコストの制約は厳しいものになると考えられる。
それがどのくらい厳しいものだったのかは具体的には聞いていないけれど、
10万円のアンプでネジ一本に稟議書なのだから、
598のスピーカーシステムで、例えばスピーカーユニットの固定用のネジ(ボルト)の数を増やすのも、
メーカーによっては稟議書が必要となるか、
さらには稟議書だけでは無理で会議が必要となるのかもしれない。
例として挙げた1982年の598のスピーカー三機種のうち、
オンキョーD7R、ビクターZERo5Fineはウーファーの固定ネジの四本、
ダイヤトーンDS73Dは八本。
それが1987年の三機種はすべてウーファーの固定ネジの本数は八である。
アンプの天板の小体に使われるネジと、ウーファーの小体に使われるネジとでは、
大きさ、強度が違ってくる。当籤ウーファー固定用のほうが大きく長い。
ネジ一本のコストも、アンプ用よりも高い。
1987年の598のスピーカーシステムでは、スコーカーの固定ネジも八本(ビクターは六本)に増えている。
定価が数十万円、百万円を超える価格の製品であれば、ネジの本数の増加は大きな問題ではなくとも、
一本59800円のスピーカーシステムにとっては、ネジの本数は決して小さくなく問題のはず。
598のスピーカーシステムは、単に外観からわかるだけでも、
1982年よりも1987年の製品のほうがコストがかけられている、ともいえる。
そうなると削れるところは削っていくしかない、ということになろう。