使いこなしのこと(その20)
欲しいと想い続けてきたスピーカーを手に入れて、すぐに音を出したくなる気持は、私にだってある。
だが、手に入れるまでに、なんらかの苦労があったスピーカーであればあるほど、
できるだけ最初の音出しから、いい環境で、と思う。
少なくとも基本的な素性のいいもの、スピーカーの品格と同等とまでいかなくても、
最低限、このくらいはあってほしいと思えるだけの品格をもっているもので鳴らしたい。
他人が鳴らしたスピーカーは、鳴らしていた人の癖が残っているのと同じように、
優れたスピーカーであれば、粗雑なアンプやプレーヤーで鳴らしていた日が長ければ長いだけ、
悪い癖が残ってしまうようなところが、確実にある。
それに破鍋に綴蓋的な使いこなしの癖が、鳴らしている本人にも滲みついてしまう……。
誰しも、最初から理想的な組合せを用意できるわけではない。
だからこそ、スピーカーが最低限求めているクォリティを有したアンプなりプレーヤーを用意できないのであれば、
しばらくがまんすることも必要ではないのだろうか。
がまんしていた時間は無駄にはならない。
むしろ使いこなしに関しては、正しい選択だと思う。