世代とオーディオ(JBL 4301・その5)
4301が登場したころの私のスピーカーの最終目標は、JBLの4343だった。
4ウェイという、鳴らしやすいとはいえない構成の4343をうまく鳴らす──、
オーディオの経験なんて、まだほんのわずかしかないにも関わらず、そんなことを夢想していた私にとって、
4301は、このスピーカーを、このスピーカーと同じ価格帯のアンプとプレーヤーで鳴らせないようであれば、
4343を手にしたとしてもうまく鳴らせないはず。
だから将来4343を手にして鳴らす時のためにも、
いま、この4301で、JBLを鳴らす感覚を身につけ磨いていく──、
そんなことを考えていたからこそ、4301が欲しくてたまらなかったわけだ。
私が編集部にいたときもそれ以前の読者だったころも、
ステレオサウンドは発売日に出たためしがない。
いつも遅れていた。
いまは12月発売の号を除けば1日発売で、それ以前は11日発売。
さらにその前は15日発売だったのだが、たいてい書店に並ぶのは20日すぎ。
ステレオサウンド 46号も、だから私が住んでいた田舎町の書店に並んだのは、3月下旬。
その少し前に国産の3ウェイのブックシェルフ型を買ったばかりだった。
46号が、いまの発売日のように1日であり、発売日に書店に並んでいたら、
4301は第一候補になっていたはず。
けれど実際には、私が手にしたデンオンのSC104は一本43800円。
4301は20000円以上高い。ペアでは40000円以上違ってくる。
この差は大きい。
プレーヤーが買える価格差であるし、
たとえステレオサウンド 46号がもっと早く発売になっていたとしても実際には4301は買えなかったであろう。
4301には、そんな想い出がある。