広告の変遷(その2)
1970年代の広告の特徴といえるのは、
評論家が広告に登場していたことが、ひとつあげられる。
このころはオーディオ雑誌にもレコード会社の広告がわりと掲載されていた。
レコード雑誌に載るレコード会社の広告もそうであったのだが、
そのレコードにおさめられている演奏を高く評価する音楽評論家、
そのレコードの音質を高く評価するオーディオ評論家の推薦文といえる、短い文章があった。
これだけの評論家に高く評価されているレコードであることを前面に打ち出していた。
そういうレコード会社の広告に較べると、
オーディオ関係の広告でそういった構成のものはどちらかといえば少なめであったけれど、
1970年代には、それでも目につくほど多かった、ともいえる。
有名なところではサンスイの「私とジム・ラン」という広告があった。
JBLのスピーカーを使われているオーディオ評論家が左ページ一面にリスニングルームでの写真が載り、
右ページには「私とジム・ラン」というタイトルの文章が載っていた。
岩崎先生、瀬川先生、菅野先生らが登場されていたし、
古いマニアの方ならご存知なことだが、当時はパラゴンを鳴らされていた江川三郎氏も登場されている。
このサンスイによる「私とジム・ラン」は広告には違いないけれど、
読者からすれば、記事として読める。
ページをただ埋めるためだけの記事なんかよりも、ずっと読み物として面白い記事ともいえる広告であった。
こういう広告を毎号入れられたとなると、編集者も気合がはいってくるのではなかろうか。
広告が、時に記事を挑発する時代が以前はあった。