Archive for 5月, 2015

Date: 5月 3rd, 2015
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(ウーファーについて・その5)

JBLのウーファー2231に採用されたマスコントロールリングは、
JBLがいうとおりの効果が得られるのであれば、どこかに実測データはないのか、とさがしていたら、
JBLではないけれどオンキョーが発表していたデータが見つかった。

オンキョーは1977年9月にセプター・システムスピーカーを発表した。
セプター・スピーカーシステムではなく、システムスピーカーと名づけられたこのシリーズは、
ウーファー3機種、ドライバー3機種、ホーン4機種、トゥイーター1機種、
この他にも音響連美、ネットワーク、エンクロージュアからなる。

このウーファーにも、JBLと同じようにマスコントロールリングが装着されている。
オンキョーではウェイトリングと呼んでいた。

このとき発表されたデータに、
ウェイトリングなし、ウェイトリング30g、ウェイトリング60gの、
周波数特性、インピーダンス特性がある。

ウェイトリングを装着することでなしの状態よりも、当然のことだがf0はわずかに左にずれる。つまり低くなる。
さらにインピータンスの上昇も、なしの状態よりも60g装着時には2/3ほどに抑えられている。

周波数特性は、意外にもいうべきか500Hz以上ではほとんど変化がない。
それから50Hzの肩特性も低い方に移行する。ただし減衰カーヴは一致している。
グラフをみると150Hzから300Hzのあいだでウェイトリングによる特性の変化幅が大きい。

ウェイトリングが重量が増すと、この帯域のレスポンスは低下している。
JBLによれば、マスコントロールリングにより、
低域の下限周波数の拡張だけでなく、堅くて軽いコーン紙を使うことで中低域のレスポンスも向上する、とある。
この辺は、オンキョーの特性結果と異るところでもある。

オンキョーの発表した特性では中低域のレスポンスは低下している。
ただしJBLのそれは、アクアプラスと比較してのことだとすれば、そうなのだろう。

とにかくマスコントロールリング(ウェイトリング)を装着しても中高域は変化しないことがわかった。
そしてオンキョーも発表しているようにボイスコイルボビンとコーン紙の結合がよりしっかりするために、
コーン紙の釣り鐘振動といわれる変形が抑えられているのが、
ウェイトリングなし/ありのストロボ写真ではっきりと確認できる。

この釣り鐘振動は中低域の音の濁りの原因ともいわれているから、
JBLのいう中低域のレスポンスの向上は、このことも含まれているのかもしれない。

Date: 5月 2nd, 2015
Cate: 書く

毎日書くということ(続・最近考えていること)

そんなことを考えていたところに、ステレオサウンド・メディアガイド(PDF)を読んだ。
ここにも「オーディオの素晴らしさ」とある。

編集長の染谷氏の文章の冒頭に、「オーディオの素晴らしさ」とある。
《オーディオの素晴らしさを読者に向けて発信し続けます。》

ほんとうだろうか、と問い正しくなる。
いまのステレオサウンドの誌面から「オーディオの素晴らしさ」が伝わってくるだろうか。
まったくないとはいわないけれど、その多くはオーディオの素晴らしさというよりも、
そこに登場するオーディオ機器の素晴らしさではないのか。

オーディオ機器の素晴らしさは、オーディオの素晴らしさを語ることもある。
けれど、オーディオの素晴らしさを必ずしも語っているとはいえない。

「そんなこまかいこと、どうでもいいじゃないか、気にしすぎだ」といわれようと、
これはとても大事なことだと私は思っている。

Date: 5月 2nd, 2015
Cate: 書く

毎日書くということ(最近考えていること)

書くためには、問いかけが必要となってくる。
いまこんな問いかけをしている。

誰かに「オーディオっておもしろいですか」ときかれたとする。
「面白い」と即答する。
その答をきいて質問者は「オーディオの面白さってなんですか」と質問してくるであろう。

オーディオの面白さとはなんだろう……、とここで考え込む。

同じような質問で「オーディオって素晴らしいですか」もある。
もちろん「素晴らしい」と即答する。
すると、ここでも「どう素晴らしいのですか」とまたたずねられる。

ここでも考え込まざるを得ない。

答えようと思えば、言葉は出てくる。
でも、その言葉が、オーディオの面白さ、素晴らしさを的確に表現できるかということに自信がもてない。

毎日、ブログを書いていても、いざそんな質問を投げかけられたら考え込む。

Date: 5月 2nd, 2015
Cate: 価値・付加価値

オーディオ機器の付加価値(余談)

別項でふれたステレオサウンドのPDF
ファイル名がstereosound_mediaguide_140401となっているから、
これからはステレオサウンド・メディアガイド(PDF)と表記していく。

ステレオサウンド・メディアガイド(PDF)にも「付加価値」が登場している。
読者プロフィールの説明文に「高付加価値への千里眼」とある。

この読者プロフィールの説明文は、誰が書いたのだろうかとつい詮索したくなる文章である。
それにしても高付加価値とは、いったいなんなのだろうか。

説明文には、高付加価値のあとに、こう続いている。
《商品の歴史や伝統、デザイン、質感、実用性にもこだわりをもつ。》と。
ということは商品の歴史や伝統、デザインを、ここでは高付加価値と定義しているのか。
だとしたら、甚だしい認識不足とひどい勘違いとしかいいようがない。

いったい、いまのステレオサウンド編集部は、付加価値をどう捉えているのだろうか、と心配になってくる。

Date: 5月 2nd, 2015
Cate: 世代

世代とオーディオ(あるキャンペーンを知って・その2)

ステレオサウンドの恒例企画となっているベストバイ。
昔は今と違い、評論家の選ぶベストバイコンポーネントだけでなく、
読者の選ぶベストバイコンポーネントも掲載されていた。

このころのステレオサウンドには毎号アンケートハガキがついていた。
ベストバイ特集号のひとつ前の号には、ベストバイコンポーネントの投票ハガキとなる。

ステレオサウンド 47号(1978年夏号)をみてみる。
年齢分布の棒グラフがある。

10〜15才:5%
16〜20才:15.7%
21〜25才:28.9%
26〜30才:29.4%
31〜35才:9.6%
36〜40才:5.7%
41〜45才:3.9%
46〜50才:1.9%
51〜55才:1.1%
56〜60才:0.5%
61才以上:0.2%
無記入:1.2%

この結果をみるかぎり、中心読者は若い世代といえる。
とはいえこの結果はベストバイコンポーネントに投票してきた読者であり、
ステレオサウンドがクライアント用につくったPDFとは調査方法も違うのだから、
このふたつの結果を照らし合せて、どれだけ正確なことがわかるのかはなんともいえない。

それでも若い世代の比率が減ってきていることはいえるのではないか。
47号はいまから37年前のステレオサウンドだから、
全体の約60%をしめる21〜30才の人たちは、いまでは58〜68才ということになり、
2014年の調査結果の年齢分布とほとんど一致している、とみることもできる。

少なくともどちらの結果もステレオサウンドの読者を対象としたものである。
やはり若い世代のオーディオマニアは減っているのか。
ステレオサウンドを読む若い人は減ってきていることだけは確かなようだ。

Date: 5月 2nd, 2015
Cate: 世代

世代とオーディオ(あるキャンペーンを知って・その1)

エラック、オラクルの輸入元であるユキムが、学割キャンペーンをやっている。
対象となるブランドはエラックとオーラデザインであり、
高校生以上の学生ならば、指定されたオーディオ販売店では35%の割引がうけられる。
ヨドバシカメラ、ビックカメラなどの量販店では25%の割引+10%のポイント。

オーディオ専門店で買っても量販店で買っても、実質的に定価の65%で購入できるわけだから、
学生にとってはたいへんありがたいキャンペーンである。

しかも通信販売には適用されないというのも、いい点だと思う。
とにかくオーディオ専門店、量販店に足を運ぶ必要があるからだ。

この学割キャンペーンは4月1日から始まっているが、いつまでなのかはユキムサイトには表記されていない。
好評であれば長く続けてくれるのだろうか。
こゆユキムの学割キャンペーンがうまくいけば、同じことを始める輸入元も出てくることだってあろう。

ユキムが、なぜ学割キャンペーンを始めたのか、
その理由はわからない。
若いオーディオマニアが減っている・少ない、とはよく耳にするようになってた。
思うに、これから先細りしていくのを指をくわえてみているわけにはいかない。
少しでも積極的になんらかの手を打とうということなのか。

では、ほんとうに若いオーディオマニアは、昔よりも減っているのだろうか。
そのことを示すなんらかの調査結果がないのかと検索してみた。
そして見つけたのが、ステレオサウンドがクライアント(広告主)用につくったと思われるPDFだ。

このPDFのファイル名をみると、2014年4月の時点の資料と思われる。
この資料の読者プロフィールにある年齢構成比をみると、たしかに若い世代の比率はかなり低い。
30歳未満はわずか5%である。

Date: 5月 1st, 2015
Cate: audio wednesday

第52回audio sharing例会のお知らせ(続・五味康祐氏のこと、五味オーディオ教室のこと)

今月のaudio sharing例会は、6日(水曜日)です。

ステレオサウンド 39号に掲載された瀬川先生による「天の聲」の書評からの引用だ。
     *
 五味康祐氏とお会いしたのは数えるほどに少ない。ずっと以前、本誌11号(69年夏号)のチューナーの取材で、本誌の試聴室で同席させて預いたが、殆んど口を利かず、部屋の隅で憮然とひとりだけ坐っておられた姿が印象的で、次は同じく16号(70年秋号)で六畳住まいの拙宅にお越し頂いたとき、わずかに言素をかわした、その程度である。どこか気難しい、というより怖い人、という印象が強くて、こちらから気楽に話しかけられない雰囲気になってしまう。しかしそれでいて私自身は、個人的には非常な親近感を抱いている。それはおそらく「西方の音」の中のレコードや音楽の話の書かれてある時代(LP初期)に、偶然のことにS氏という音楽評論家を通じて、ここに書かれてあるレコードの中の大半を、私も同じように貧しい暮しをしながら一心に聴いていたという共通の音楽体験を持っているからだと思う。ちなみにこのS氏というのは、「西方の音」にしばしば登場するS氏とは別人だがしかし「西方の音」のS氏や五味氏はよくご存知の筈だ。この人から私は、ティボー、コルトオ、ランドフスカを教えられ、あるいはLP初期のカザドウシュやフランチェスカフティを、マルセル・メイエルやモーリス・エヴィットを、ローラ・ボベスコやジャック・ジャンティを教えられた。これ以外にも「西方の音」に出てくるレコードの大半を私は一応は耳にしているし、その何枚かは持っている。そういう共通の体験が、会えば怖い五味氏に親近感を抱かせる。
     *
S氏という音楽評論家──。
盤鬼、西条卓夫氏のことで間違いないはずだ。

時間はこれまでと同じ、夜7時からです。
場所もいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 5月 1st, 2015
Cate: 変化・進化・純化

変化・進化・純化(その4)

瀬川先生が書かれていることをおもっている。
     *
「天の聲」になると、この人のオーディオ観はもはや一種の諦観の調子を帯びてくる。おそらく五味氏は、オーディオの行きつく渕を覗き込んでしまったに違いない。前半にほぼそのことは述べ尽されているが、さらに後半に読み進むにつれて、オーディオはすでに消えてただ裸の音楽が鳴りはじめる。しかもこの音楽は何と思いつめた表情で鳴るのだろう。
     *
ステレオサウンド 39号に掲載された「天の聲」の書評である。

《オーディオはすでに消えてただ裸の音楽が鳴りはじめる。》
これが(これも)純化なのだろう……。

《オーディオの行きつく渕を覗き込んでしまった》から鳴りはじめる音楽なのか。

私はオーディオの行きつく渕を覗き込めるのか。
その渕までたどり着けるのか。

瀬川先生が最後に書かれている。
《「天の聲」の後半にも、行間のところどころに一瞬息のつまるような表現があって、私は何度も立ちどまり、考え込まされた。》と。

Date: 5月 1st, 2015
Cate: オーディオ評論

「新しいオーディオ評論」(その4)

2011年3月14日、twitterにこんなことを書いた。
     *
はっきり書けば、ステレオサウンドはすでに役目を終えた雑誌だと思っている。それでも、今後のオーディオのあり方についてなにかを提示していけるのであれば、復活できるとも思っている。これはステレオサウンドの筆者についても同じことが言える。
     *
なんと傲慢なことを書くヤツだと思われる方もいよう。
同意される方もいる。

これまでにも、このブログでステレオサウンドに批判的なことを書いてきている。
それを読まれて、ステレオサウンドの現状を嘆いてる、と受けとめられるかもしれない。

別に嘆いているつもりはない。
どちらかといえば挑発している。
それは私自身が、おもしろいと思えるステレオサウンドを読みたいからである。

「今号のステレオサウンドはおもしろかった」、
そう、このブログで書いてみたい──。

そういう気持はこれからも持ちつづけるだろうが、期待はあまりしていないというのが本音でもある。
少なくともおもしろいと思わせてくれるステレオサウンドが、
これから先、一号くらいは出てくるかもしれない。

けれど四年前に書いているように、役目を終えたと思っているわけだから、
ステレオサウンドに「新しいオーディオ評論」は、まったく期待していない。
期待できない、といい直すべきか。