Archive for 10月, 2008

Date: 10月 7th, 2008
Cate: イコライザー

私的イコライザー考(その4)

UREIの813は、新しいスタジオモニタースピーカーとして開発され、
メインユニットにアルテックの同軸ユニット604-8Gを採用している。

604が搭載されているアルテック純正のスピーカーシステム612との大きな違いは、
サブウーファーの採用ではなく、ネットワークにある。

604-8Gの構造図を見ればわかるが、中高域を受け持つドライバーの振動板と
ウーファーの位置関係はかなり離れている。
ホーン型ということもあり、中高域が後ろに配置されている。
とうぜんウーファーからの音とドライバーからの音には時間差が生れる。

同軸ユニット構造とすることで、発音源の一体化をはかっても、これでは効果も薄れる。
デジタル器材が進化し安価になった今なら、
デジタルチャンネルデバイダーを用いてのマルチアンプ駆動で、
ウーファー側にディレイをかけて補正するところだが、
77年当時で、しかもマルチアンプではなくアンプ1台で、
同じことを実現するのは無理のように思われていた。

UREIは独自のネットワーク技術で時間差を補正している。
このネットワークの存在と、
604-8Gのオリジナルのセルラホーンを、独自の濃い水色のホーンへの変更のふたつからは、
鮮やかな印象を受けた。

このネットワーク技術をタンノイの同軸型ユニットにも採用したら、
素晴らしい音が聴けるに違いない、と当時中学生だった私は、そんなことを想っていた。

当時はどういう技術なのか具体的なことはまったくわからなかったが、
UREIはいまJBLの一部門であるため、JBL Proのウェブサイトにアクセスすれば、
813のネットワークの回路図をダウンロードできる。

813だけではなく、QUADのESL63も、この場合、ネットワークとは言えないが、
デジタル技術ではなくアナログ技術で、時間差をつくりだすことと、
同心円上に8分割に配置された固定電極の採用で、
平面波しか出せないコンデンサー型スピーカーから、中高域のみ球面波を可能としている。
ESL63もコイルの複数使用での実現である。

ESL63は球面波を実現したと言われるが、
この動作によって生れるのが、ほんとうに球面波なのかは、すこし疑問に思う。
たしかに球面波に近いと思うのだが……。

UREIの813とQUADのESL63を例に挙げたが、
技術書に書かれていることだけでなく、実際の製品から学べることは多い。
技術書に書かれていることだけがすべてではないということである。

Date: 10月 7th, 2008
Cate: イコライザー

私的イコライザー考(その3)

スピーカーのレベルコントロールをいじれば、クロスオーバー周波数はわずかだが変化する。
2ウェイ・スピーカーのでトゥイーターのレベルをあげると、
クロスオーバー周波数は低い方に移動する。レベルを下げると高い方にスライドする。
3ウェイで、スコーカーのレベルを上げると、ウーファーとのクロスオーバーは低くなり、
トゥイーターとのクロスオーバーは高くなる。

だからレベルコントロールはいじらない方がいいと言いたいわけではない。
必ずしも、各ユニットのカットオフ周波数とクロスオーバー周波数が一致するわけではない。
このことを忘れてほしくないだけである。

3年前に、あるネットの掲示板で、スピーカーのネットワークに関して、
ふたりの方が言い合いをされていた。
そのうちのひとりは、ネットワークが12dB/oct.の場合、
2ウェイならばトゥイーターを、3ウェイならスコーカーを逆相接続にする、
スピーカーの教科書にもそう書いてあるし、
メーカー製のスピーカーもそのようになっていると力説されていた。

たしかに1970年代に出版されていたスピーカーの技術書には、そう書いてある。
間違いではないし、事実、メーカー製の中に逆相接続のモデルもあった。

けれど80年代から12dB/oct.のネットワーク使用でも逆相接続ではなく、正相接続が出てきたし、
おそらく、いまきちんとした技術力をもつメーカーの製品なら、逆相接続はほとんどないはずだ。

音場感の再現を重視すれば、ウーファーとトゥイーターの極性が逆相のままというのはありえない。
たしかに12dB/oct.のネットワークだと、クロスオーバー周波数でディップが生じる。
それから逃げるために片方のユニットを逆相接続するわけだが、
この問題をさける手法は、なにも逆相接続だけではない。
メーカーは確実に技術を進歩させている。

70年代は、ラジオ技術誌や無線と実験誌の別冊として、
スピーカーやプレーヤーに関する技術書が、メーカーのエンジニアによって書かれていた。
いまはその手の本はない。
そのため、上で挙げた例のように古い技術書に書かれていたことを
オウムのように繰り返す人が出てきてもしかたないだろう。

個人攻撃をするつもりはないが、
その人は、ネットワークでタイムディレイは実現できないと断言されていた。
たしかにデジタルディレイのような細かいディレイを実現するのは困難だが、
1977年にはUREIの813が登場している。

Date: 10月 7th, 2008
Cate: イコライザー, 瀬川冬樹

私的イコライザー考(その2)

3年前くらいに思いついたが、まだ試していないイコライザーについて書いてみる。

帯域のバランスを簡単に変化させるのは、スピーカーについているレベルコントロールだろう。
最近のモデルは省いているものが多いが、3ウェイ、4ウェイとなるほど、
レベルコントロールは重宝するといえる。

レベルコントロールの調整といえば、瀬川先生のことが浮ぶが、
ステレオサウンド 38号に井上先生が次のように書かれている。
     ※
システムの使いこなしについては最先端をもって任ずる瀬川氏が、例外的にこのシステムの場合には、
各ユニットのレベルコントロールは追い込んでなく,
メーカー指定のノーマル位置であるのには驚かされた。
     ※
このシステムとは、JBLの4ウェイ・スピーカー、4341である。
その後に使われていた4343も、レベルコントロールはほとんどいじっていない、と
どこかに瀬川先生が書かれていたと記憶する。

そういえばKEFのLS5/1Aはレベルコントロールがない。そのことが不満だとは書かれていないはず。

LS5/1Aにしても、4341(4343)も購入されている。それは気にいっておられたわけだし、
長い時間をかけて鳴らしこめるわけだ。

瀬川先生がスピーカーのレベルコントロールを積極的に使われるのは、
試聴などで、短時間で、瀬川先生が求められる音を出すための手段だったようにも思える。

レコード芸術の連載で、スピーカーは最低でも1年間、できれば2年間は、
特別なことをせずに、自分の好きなレコードを、
ふだん聴いている音量で鳴らしつづけることが大切だと書かれている。

惚れ込んで購入するスピーカーなら、帯域バランスに関しても、
大きな不満を感じられることはなかっただろう。
だからこそ、レベルコントロールをいじらずに、大切に鳴らし込まれていたのだろう。

38号の写真を見ると、4341の下には板が敷かれているが、
板と板の間に緩衝材のようなものを見える。
このあたりの使いこなしは積極的に行なわれていたようだ。

Date: 10月 6th, 2008
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その11)

くり返しになるが、ワイドレンジになればなるほど、
ナロウレンジでは顕在化しなかった問題が出てくる。
贅をつくすことではなく、だから注意深く意を尽くすことが求められる。

しかもステレオだということを忘れてはいけない。
モノーラルのワイドレンジ化はステレオのそれとくらべれば、それほど難しくはないと言えよう。
もちろんモノーラルでもワイドレンジ化にともない、いくつかの問題が顕在化するが、
ステレオほどではない。

そしてモノーラルを2つ用意して鳴らすのがステレオではないということだ。

例えばモノーラルパワーアンプの電源の取り方ひとつでも、ステレオの場合、
多重ループの問題を考慮すると、左右チャンネル(2台)とも、
同一コンセントから電源をとるべきである。

右チャンネルのパワーアンプはこっちのコンセント、
左チャンネルの分はあっちのコンセント、とわざわざ分ける人がいる。

分けると、一瞬、分離がよくなったように聴こえるだろう。
分離の良さというか、分離が良くなったように感じられることと、
音場感の再現性が向上することは区別してほしい。

音場感に注意して聴けば、AC電源の多重ループについて知らなくても、
モノーラルパワーアンプは同一コンセントに挿すことになる。

コンデンサースピーカーの場合も同じだ。
必ず同一コンセントから電源をとるべきである。

Date: 10月 6th, 2008
Cate: ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2)

今回のインターナショナルオーディオショウで「これは聴いてみたい」と思ったのは、
マッキントッシュのパワーアンプMC2301だ。
型番こそ、2301とステレオ機のそれだが、MC2301はモノーラルの管球式アンプだ。
KT88を片チャンネル8本使い、300Wの出力。
ほとんど、以前のMC3500の現代版である。
MC3500は、同社最後の管球式アンプだった(その後、管球式が復活したため最後ではなくなったが)。
MC3500の出力は350W。実物を見たことはあるが、実は音を聴いたことはない。

MC2301は、見た目も、きっと音も、MC3500よりも洗練されている。
安定度も問題なく高いはずだ。

このアンプを、マッキントッシュジャパンのブースで見ていたら、
タンノイのスピーカーで聴いてみたくなった。
カンタベリー15と組み合わせて聴きたい。

まだ熊本に住んでいた頃、ロックウッド社のジェミニというスピーカーを聴いたことがある。
ロックウッドのスピーカーはタンノイのユニットを、
独自のバスレフ型エンクロージュアに収めたもので、
ずいぶんタンノイ純正のスピーカーとは異る印象を受けた。

聴いたといってもわずかな時間だし、ずいぶん昔のことだけど、
タンノイのユニットとは思えないほどエネルギッシュな音だった。

もしかすると、あの時の音が、MC2301で鳴らすカンタベリー15から聴けるような気がしてしまう。

Date: 10月 6th, 2008
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その10)

アースのループもAC電源の多重ループも、
オーディオ機器がワイドレンジになればなるほど影響が大きくなってくる。

そして、アースには分けるべきものと分けてはいけないものがあることを憶えていてほしい。
ラインケーブルのアースは分けてはいけないものだが、
パワーアンプがモノーラル機ならば、分けたほうがいい。
それからパッシヴフェーダーのところで書いたが、信号の分流(帰還)用のアースと、
信号基準のアースは最終的には1点で接続するが、
そこまでは合流しないように分けるべきである。
たとえばスピーカーのネットワークのアースも分離すべきだと考える。

6dB/oct.のネットワークだと、ウーファーにはコイルが、トゥイーターにはコンデンサーが
直列にひとつだけ入るだけなので問題はないが、
12dB以上になると並列にコンデンサーやコイルがはいる。
ウーファーだとコイルが直列にはいったあとにコンデンサーが並列にはいる。
このコンデンサーのアースラインと、ウーファーユニットのアースラインは
スピーカーの中でひとつにまとめられてしまうが、
この2つのアースラインに流れる信号は異る。
一本にまとめないで、それぞれ独立したアースラインで、
パワーアンプのスピーカー端子のところでまとめる。

この方式でパワーアンプとスピーカーを接続すると、
3ウェイ、4ウェイとユニットの数が増えるに従って、
ネットワークが12dB、24dB……と増えるに従って、
アースラインの数が一気に増えてしまうのが難点だが、
2ウェイならば、実用の範囲で処理できる。

Date: 10月 5th, 2008
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その1)

インターナショナルオーディオショウで、個人的に印象に残っているのは、
ベーゼンドルファーの不在である。

去年、聴いたベーゼンドルファーの音を
もういちど聴きたくて会場に足を運んだといってもいいくらいだっただけに、残念である。

今年はじめ、ベーゼンドルファーをヤマハが買収したニュースをきいて、
いちばん心配だったのがスピーカーの製造が終了してしまうことだった。
案の定だ。

ピアノメーカーがつくったスピーカーだけに、ピアノの再生は得意だけど、
ほかのものは……、という印象が強かったようだが、
響きの忠実性は、高いものを持っていたスピーカーだった。

去年のノアのブースでかけられていたカンターテ・ドミノだが、
教会で録音されていることはよく知られているが、
この教会は石造りではなく、木で造られた教会だけに、
一般にイメージされる教会の響きと違い、暖かく柔らかい。
この木の感じを、よく出してくれる。

そして次にかかった、同じ教会でも石造りのところで録音されたCDでは、
そういう響きを見事に響かせてくれる。

いわゆる音場感とは違う、響きの再現性。
なかなかこういうスピーカーはないだけに、ひじょうに残念だが、
ベーゼンドルファーのスピーカーに関する主要スタッフは、ふたりだけらしい。
もしかすると、彼らが独立して、またスピーカーづくりをはじめるかもしれない、
という情報も耳にした。期待している。

Date: 10月 4th, 2008
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その9)

早瀬(文雄)さんが、クレルのKSA80を使われていた時期だから、1990年ごろか。
よく早瀬さんの家に遊びに行っていて、KSA80のリアパネルに、
パワーアンプにも関わらず、アース端子が設けられているのを見て、
これなら簡単にできる、と思い、ある提案をした。

プリアンプもクレルで、たしかバランス伝送で接続されていた。
このケーブルにすこし細工をする許可をもらって、プリアンプとパワーアンプのアース端子を結び、
接続ケーブルのXLRコネクターをばらし、片側のシールドをはずした。
アンバランスでもバランス接続でも同じだが、プリ・パワーともステレオ構成ならば、
アースのループができる。
プリアンプの出力もRCAコネクターは見掛けは、アースが独立しているようにみえるが、
内部ではひとつになっている。
パワーアンプの入力も同じである。
つまりケーブルの両端はつながっているアンプの内部でひとつになっている。
接続ケーブルが長ければ長いほど大きなループが形成される。

両端がつながっているなら同電位なので問題ないだろう、と思われるだろう。
実際に浮遊容量、磁束の横切り、高周波やコネクター接触の問題などがからみ合って、
問題なしとは言えない。

解決方法は簡単でケーブルにすこし手を加えればいい。
上記したようにアース側の接続を片側はずして、アース線を用意して接続する。
プリ・パワー間のとき、どちらのアースを外すかは、ひとそれぞれだろうが、
私はプリアンプの領域はパワーアンプの入力端子までと考えるので、
パワーアンプの入力側のアースのハンダを外す。もちろん両チャンネルともだ。
CDプレーヤー・プリアンプ間も同様だ。

うちでは1m、ながくても2m弱だったが、早瀬さんのところはプリ・パワー間は5、6mあった。
同じことを自分のところでもやっていたので、これだけケーブルの長さが違うと、
かなり効果は大きく出るであろうと予想はしていたにも関わらず、ふたりして驚いたものだ。

どのように音が変化するかは書かない。
簡単な作業で実験できることなのでご自身の耳で確認してみてほしい。

Date: 10月 3rd, 2008
Cate: 菅野沖彦

菅野沖彦氏のスピーカーについて(その2)

菅野先生が使われているスピーカーに共通するのは、中高域の拡散ともうひとつ、
低域の電子的なコントロールがあげられる。

マッキントッシュのXRT20は、
専用のヴォイシングイコライザーMQ104(調整ポイントは4つ)かMQ107(調整ポイントは7つ)で、
専門のエンジニアによる部屋のアコースティック環境の補正(ヴォイシング)サービスを行なっていた。
菅野先生はご自身で調整されている。

JBLの375を中心としたシステムウーファーと、
ジャーマン・フィジックスのDDDユニットのシステムの低域は共通で、
JBLのウーファーを、マルチアンプ駆動で使われている。
このウーファーも、もちろんグラフィックイコライザーでコントロールされている。

中高域の拡散と低域の電子的なコントロール──、
このふたつの要素を充たしているスピーカーを、現行製品から見つけ出すと、
B&OのBeolab5が、まさしくそうである。

オシャレなオーディオ機器として扱われがちなB&Oの製品だが、
違う観点からBeolab5を、いちど見てほしい。

Date: 10月 2nd, 2008
Cate: 瀬川冬樹

スピーカーとの出合い

明日からインターナショナルオーディオショウがはじまる。
晴海でオーディオフェアが開催されていたときの状況と比較すると、
試聴条件ははるかによくなっている。

けれども入りきれないほどの人が集まったブースでは、
なかなかいい音で鳴ってくれないし、ほかの理由で本領発揮できないスピーカーもあろう。

「オーディオ機器は自宅試聴しないとほんとうのところはわからない。
特にスピーカーはその傾向が強い」という人もいる。
なじみのオーディオ店(というよりも人だろう)があり、
関心のあるオーディオ機器を自宅で聴けるのなら、それに越したことはない。

あえて言おう。どんなにひどい音で鳴っていたとしても、
自分にとって運命のスピーカーというものと出合ったときは、すぐにわかるはずだ。

瀬川先生が以前言われていた。
「運命の女性(ひと)と出逢ったならば、そのひとがたとえ化粧していなくても、
多少疲れていて冴えない表情をしていたとしても、ピンとくるものがあるはずだ。
スピーカーもまったく同じで、
ひとめぼれするスピーカーなら、ひどい環境で鳴っていても惹かれるものがある」

瀬川先生の、この言葉は自戒も含まれているように思う。

1968年に山中敬三氏から、「お前さんの好きそうな音だよ」と声を掛けられて、
山中氏のリスニングルームでKEFのLS5/1Aを聴かれたが、
「この種の音にはどちらかといえば冷淡な彼の鳴らし方そのもの」だったし、
しかも山中氏のメインスピーカーアルテックA5の間に置かれ、
左右の距離がほとんどとれない状態での音出しも影響してか、
LS5/1Aの真価を聴きとれなかったことへの……。

とにかくショウの3日間、直感を大事にして音を聴いてほしい。

Date: 10月 2nd, 2008
Cate: カタログ, ジャーナリズム

カタログ誌(その1)

1970年代は、年に2回発行されていたハイファイ・ステレオガイド。
年1回になり、名称もオーディオガイド・イヤーブックにかわり、
1999年末の号で休刊になった、いわゆるカタログ誌。

オーディオがブームのころは、販売店もカタログ誌を発行していたし、
サウンドステージを発行していた音楽出版社も一時期発行していたのに、
いまオーディオのカタログ誌はない。

カタログ誌なんて、まったく役に立たないから不要だ、と思われている方もいるだろう。
それほど鮮明ではない、モノクロの写真1枚とある程度のスペックと簡単なコメントだけでは、
なんにもわからないから、というのも理解できなくはない。

でも、意外にカタログ誌は楽しめる。

趣味にしている自転車の世界では、カタログ誌がけっこう発行されている。
フレーム本体、完成車のカタログに、周辺パーツのカタログといったぐあいに、
複数の出版社から出ていて、写真がカラーで大きく掲載されていることもあって、
手にとって見ているだけで、すなおに楽しい。

カタログ誌は、年月とともに資料的価値が高くなってくる。

カタログ誌が一冊あれば、瀬川先生のように電卓片手に、あれこれ組合せを空想しては楽しめる。
カタログ誌は、手元に一冊あると重宝する。

カラー写真で、しかも1枚ではなく数枚の写真を大きく、
スペックも発表されている項目はすべて書き写し、
どういう製品なのかについて、コメントも掲載するとなると、
ネットで公開するのが最善なのかもしれない。

ネットの最大の特長と私が考えているのは、即時性ではなく、アーカイヴ性である。

ネットでのカタログ誌はページ数の制限を受けない。
現行製品ばかりでなく、製造中止になった製品も資料として残していける。

Date: 10月 1st, 2008
Cate: 927Dst, EMT, 録音

80年の隔たり(その3)

ティボー/コルトーのCD復刻を、
メタル原盤から行なったのはキース・ハードウィック(Keith Hardwick) で、
当時のレコード芸術誌に関連記事が載っていた。

使用器材で目を引くのは、EMTの927だ。DstではなくAstのようで、
カートリッジはEMT製ではなく、
スタントンなどのMM型をメタル原盤にあわせて使いわけていたと記憶している。
MM型カートリッジの採用は、針先の交換が容易に行なえることがメリットとして、である。

ステレオサウンドの姉妹誌HiViが、DAT登場の時、面白い企画ができないかと、
927Dstの音をDATで録音して再生して比較するという記事をやっている。
927Dstの出力をA/D変換してDATに収録して、それをさらにD/A変換して再生しても、
927Dstの音ははっきりと聴きとれる。
もちろん個々のDATによって、多少の差はあるが、
927Dstの音を聴いたことのある人ならば、驚かれるだろう。

当然、ティボー/コルトーの復刻CDから聴ける音にも同じことは言えるはずだ。