瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・補足)
レコード芸術では、4343をスチューダーA68やルボックスのA740で鳴らすと、
4343の表現する世界が、マーレレビンソンの純正組合せで鳴らしたときも狭くなる、と発言されている。
このことだけをとりあげると、ロジャースのPM510の表現する世界も、4343と較べると狭く、
だから同じ傾向のA68、A740とうまく寄り添った結果、うまく鳴っただけのことであり、
スピーカーシステムとしての性能は、4343の方が優れている、と解釈される方もいるかもしれない。
4343とPM510では価格も違うし、ユニット構成をふくめ、投入されている物量にもはっきりとした違いがある。
PM510はイギリスのスピーカーシステムとしては久々の本格的なモノであったけれど、
4343やアメリカのスピーカーシステムを見慣れた目で見れば、
あくまでもイギリスのスピーカーにしては、ということわりがつくことになる。
だがスピーカーシステムとしての性能は……、という話になるとすこし異ってくる。
「BBCモニター考」の最初に書いたことだが、
私の経験として、4343では聴きとれなかった、あるパワーアンプの音の粗さをPM510で気がついたことがあった。
「BBCモニター考」ではそのパワーアンプについてはっきりと書かなかったが、
このアンプはマッキントッシュのMC2205だった。
MC2205以前のマッキントッシュのパワーアンプならまだしも、MC2205ではそういうことはないはず、
と思われるかもしれない。私もMC2205にそういう粗さが残っていたとは思っていなかった。
しかもそのローレベルでの音の粗さが4343では聴きとれなかったから、
PM510にしたとき、MC2205の意外な程の音の粗さに驚き戸惑ってしまった。
そのときは、だれも気がついていないことを発見したような気分になっていた。
でもいま手もとにある、ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’80」の中で、
瀬川先生がすでに、MC2205のローレベルの音の粗さは、すでに指摘されていた。