Archive for category テーマ

Date: 10月 29th, 2023
Cate: スピーカーとのつきあい
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Acoustic Research LST(その1)

別項「終のスピーカー」で書いているように、
私にとってのジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットは、まさに終のスピーカーである。

ジャーマン・フィジックスをよりよく鳴らすこと、
もうそれだけともいえる──、
けれど、やはりオーディオマニアとして、鳴らしてみたいスピーカーはいくつかある。

JBLのパラゴンは、どうしても外せない。
ヴァイタヴォックスも、その陰翳濃い音を自分の音としたい。
シーメンスのオイロダインも、フルトヴェングラーを聴くためだけに欲しい。

そんなふうにいくつかのスピーカーのことが頭に浮ぶ。

こういうスピーカーとは少し違う意味で、気になるスピーカーもやはりある。
そのうちの一つが、ARのLSTである。

LSTには、さほど興味がなかった。
LSTを聴く機会はなかった。

けれどマーク・レヴィンソンがCelloを興し、
スピーカーシステムの第一弾として発表したAmati(アマティ)は、
まさにLSTをマーク・レヴィンソンが復刻したといえるモノだった。

Amatiは、オールCelloのシステムで聴いている。
Celloのアンプには、登場ごとに感心し、驚かされたが、
Amatiに関しては、心が動くことは一度もなかった。

Amatiを含めLSTは、私にとっては、そういう存在でしかなかった。
けれど、なぜかここ一年くらい、少し気になってきている。

LSTのユニット配置は、あれでいいとは考えにくい。
なのに、LSTというよりもLST的なスピーカーはおもしろいのではないのか、
そう考えるようになってきている。

高忠実度再生を目指して、というスピーカーとしてではなく、
もっと大らかな気持でスピーカーというからくりをとらえるならば、
LSTはなかなか興味深い存在といえる。

Date: 10月 29th, 2023
Cate: Jazz Spirit

二度目のナルシス(その6)

先日(10月25日)、新宿のジャズ喫茶、ナルシスに行ってきた。
これで七回目のナルシス。

ナルシス初めてという二人といっしょに行ってきた。
二人ともナルシスをとても気に入ってくれた。

一人の方は、
新宿駅で乗換えなので、これからちょくちょく行きます、と言われた。
三人で行ったため、カウンターには座れなかった。

これまでずっとカウンターだったから、奥のテーブル席は初めて。
エアコンを必要としない、いまの季節、
ガラス窓は少し開けてある。

そこから歌舞伎町の雑踏、ざわめきが入ってくる。
それが邪魔と感じることはなかった。

むしろ、カウンター側から鳴ってくるジャズと、
その反対側から忍び込んでくる繁華街のざわめきとが、
なんともいい感じで融合している、そんなふうに感じていた。

私だけがそう感じていたのではなく、同行の二人も同じように感じていた。

Date: 10月 29th, 2023
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade)のこれから(その1)

昨年9月から再開したaudio wednesdayだけれど、
くり返し書いてきているように、どこか特定の場所を確保して、というわけではない。

なので以前のように音を出すことはできないでいる。
このまま、ずっとそうなのか、それとも音を出せるところが見つかるのか。

特に探すこともしていないのだから、見つかるわけはない。
そうなのだが、「ここで試聴会とかやりませんか」といってくれる人がいる。

とてもありがたい。
どんなふうになるのかははっきりしたことは伝えられないが、
来年からは、年に数回は音を鳴らすことができよう。

継続していくことで、いつかは変化が訪れるのだろう。

Date: 10月 29th, 2023
Cate: 正しいもの
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正しいもの(その24)

この項で何度も書いてる井上先生の、
《ブルックナーが見通しよく整然と聴こえたら、それが優れたオーディオ機器なのだろうか》。

ステレオサウンド 94号(1990年春)の特集、
CDプレーヤーの試聴でのEMTの921の試聴記の最後に、こう書かれていたから、
このころの音の傾向についての井上先生のあえてのひとことなのだろう、と当時は受けとめていた。

一週間ほど前に、ある訃報に接した。
その時、そうだったのかも──、と思った。

CDプレーヤーの試聴記だから、
井上先生は《それが優れたオーディオ機器なのだろうか》とされているが、
《それが優れた音なのだろうか》としたら、どうか。

そのことに気づいた時、
井上先生のこのひとことは、ある人に向けてのメッセージだったのかもしれない、と。

ほんとうのところは、いまとなってはわからないし、
ある人が、この井上先生の試聴記をどう読んだのかもわからない。

それでも、そんなふうにおもえてならない。

Date: 10月 23rd, 2023
Cate: High Resolution

MQAのこれから(とTIDAL・その10)

今日は23日。あと一週間ほどで10月が終る。
Qobuzは、10月に日本でのサービスを開始するということなのだが、
日本での正式な発表はまだない。

10月に間に合うのか、
それとも年内になんとか開始ということになるのか、
始まらずに来年以降ということになるのか。

TIDALの日本でのサービス開始も、どうなるのだろうか。
突然、始まるのか。

Date: 10月 23rd, 2023
Cate: デザイン

Where We Are – ヤマハデザイン研究所60周年企画展(その2)

最終日の今日、行ってきた。
平日の夕方にもかかわらず、会場には多くの人がいた。

熱気があった、と感じた。
できれば初日に行って、なにか書こうと思っていたのだけれど、
なかなか都合がつかずに、これを書いている時には、もう終ってしまっている。

いわゆるオーディオ機器の展示はなかったけれど、
無指向性スピーカーはあったし、
オーディオに関係しているといえるモノもあった。

もう少し会期が長ければ、とか、他のところでも開催してくれれば、とは思う。

今日、みてきたモノが、
これから先のヤマハのオーディオ機器のデザインにどう取り入れられていくのか、
それはいまのところなんともいえないが、
少なくとも期待してもいいのではないかと感じることがあった。

見終って会場をあとにしようとしたとき、入り口にあったパネルにある文章を読んでいた。
するとスタッフの方(おそらくデザイン研究所の方だろう)が、話しかけてこられた。

その話の内容に頷きながら、その人の熱っぽさを感じていたからだ。

Date: 10月 23rd, 2023
Cate: ディスク/ブック

Alice Ader(その3)

2010年1月に買ったアリス・アデールの「フーガの技法」。
聴いてすぐに感じたのは、
グレン・グールドがピアノで「フーガの技法」を演奏していたら──、だった。
同じ感銘を受けただろう、である。

だからといって、グールドとアリス・アデールの演奏がまったく同じということではなく、
いいたいのは感銘が同じということだ。

ここでもグレン・グールドのことばを引用しておくが、
グールド、こう語っている。
     *
芸術の目的は、神経を昂奮させるアドレナリンを瞬間的に射出させることではなく、むしろ、少しずつ、一生をかけて、わくわくする驚きと落ち着いた静けさの心的状態を構築していくことである。われわれはたったひとりでも聴くことができる。ラジオや蓄音機の働きを借りて、まったく急速に、美的ナルシシズム(わたしはこの言葉をそのもっとも積極的な意味で使っている)の諸要素を評価するようになってきているし、ひとりひとりが深く思いをめぐらせつつ自分自身の神性を創造するという課題に目覚めてもきている。
     *
グールドが語る《芸術の目的》を、アリス・アデールの「フーガの技法」に感じていた。

Date: 10月 15th, 2023
Cate: オーディオ評論

音の轍(その3)

録音は未来。
グレン・グールドの言葉だ。

録音は過去だ。
そんなふうに捉えている人もいる。

録音が未来なわけがない。
そう捉える人の方が多いのかもしれない。

けれど、音の轍について考えるならば、
録音は未来ということが見えてくるはずだ。

Date: 10月 15th, 2023
Cate: ディスク/ブック

Alice Ader(その2)

アリス・アデールの「フーガの技法」を初めて聴いた日のことは憶えている。
それまでアリス・アデールのことはまったく知らなかった。
名前も聞いたこと、見たこともなかった。

若いピアニストではなかった。
現在、78歳のフランスのピアニストである。

「フーガの技法」を聴き終って、なぜ、この人をいままで知らなかったのか、
不思議でならなかった。

そのアリス・アデールが、2024年2月に来日する。
やはり初来日ということだ。

武蔵野市立武蔵野市民文化会館の小ホールで、
2月12日が「フーガの技法」、
17日がドビュッシー、ラヴェルなどのフランスの作曲家の小品。

チケット販売は、今日から始まっている。

Date: 10月 13th, 2023
Cate: きく

感覚の逸脱のブレーキ(その9)

別項で「アクティヴ型スピーカーシステム考」を書いているが、
よくできたアクティヴ型スピーカーも、
優れたヘッドフォンと同じように、感覚の逸脱のブレーキといえよう。

Date: 10月 13th, 2023
Cate:

賞からの離脱(その52)

無線と実験が、12月発売の1月号から、これまでの月刊誌から季刊誌になる。

特に驚きはない。
ラジオ技術も書店売りがなくなり、月刊誌から隔月刊誌になり、
今年になってからは、隔月刊の発行はあやしくなっている。
5/6月号が、まだ出ていないのだから。

オーディオ雑誌で月刊なのは、ステレオだけなのか。

今回の無線と実験の季刊化で思うのは、
12月発売の号からということは、
3月、6月、9月、12月発売ということ。

ステレオサウンドと同じだし、
オーディオアクセサリーにしても、アナログにしても、発売日は近い。

いろいろ事情はあるのだろう。
いちばん大きいのは、賞がらみのはずだ。
季刊誌になっても無線と実験は、賞を継続していくのだろう。
ならば年末に賞の企画を持ってきたい。

賞から離脱するオーディオ雑誌はないのか。
そんなことをおもってしまう。

Date: 10月 13th, 2023
Cate: High Resolution

MQAのこれから(と来春の新製品)

来春登場予定のデジタルコントロールアンプは、MQA対応の予定だときいている。
どのブランドなのかもきいているけれど、まだ明かさないでおこう。

デジタルコントロールアンプといっても、
従来のコントロールアンプにD/Aコンバーターだけを搭載した内容ではなく、
デジタル信号処理を積極的に搭載して、
ルームチューニングの他に、
帯域分割(いわゆるチャンネルデヴァイダーとしての機能)も可能となっている。

そういうモデルが、MQA対応になるということは、
やっと、そういう製品が登場するのか、と思うだけでなく、
MQAの新しい可能性というよりも新しい領域を聴けるようになるわけだ。

とにかく、いまは予定通りにMQA対応で、このモデルが来春登場してくれることを願うばかり。

Date: 10月 13th, 2023
Cate: デザイン

Where We Are – ヤマハデザイン研究所60周年企画展(その1)

ヤマハのデザイン部門が発足して、今年で60年ということで、
東京・六本木のAXISギャラリーで、
10月21日(土)から23日(月)まで、
Where We Are – ヤマハデザイン研究所60周年企画展」が開催される。

三日間という短い開催だけれども、
都合をつけて行くようにしたい。

Date: 10月 10th, 2023
Cate: ワイドレンジ

JBL 2405の力量(その1へのコメントへの返信)

四日前に(その1)へのコメントがあった。

七年前、四谷三丁目の喫茶茶会記で行っていたaudio wednesdayでのスピーカーに関しての質問だ。
この時は、アルテックのドライバーが不調ということで、私のJBLの2441と2397を持参した。
トゥイーターは、デザイナーの坂野さんから2405を借りての3ウェイ構成である。

ウーファーはアルテックの416-8Cで、これら三つのユニットのなかでは一番出力音圧レベルが低い。
コメント(質問)には、
《2441と416のレベル調整は何か入っているように思いますが》とあるが、
この時、2441へはアッテネーターの類は使用していない。

ではどうしたかというと、これも別項で簡単に触れているように、
マークレビンソンのLNP2の3バンドのトーンコントロールを使って、
なんとかバランスをとっている。

なので完璧なバランスというわけではないけれど、破綻をきたしているバランスではなかった。
バランス重視であれば、アッテネーターを作り、細かく調整していくのだけれど、
この時は時間の余裕もなかったし、2441の実力をストレートに発揮したかったということもあって、
あえてアッテネーターは使わなかった。

こういう方法をすすめることはしない。
コメントにもあるように、マルチアンプのほうが簡単である。

Date: 10月 10th, 2023
Cate: ディスク/ブック

アンジェラ・ヒューイットのモーツァルト

アンジェラ・ヒューイットの名前は知っていた。
グレン・グールドと同じトロント出身のピアニストとして知っていた。

ずっと以前に、もうおぼろげだけどCDを買って聴いている。
バッハのピアノ協奏曲だったはずだ。

聴いていることは確かだけど、それきりだった。
悪いとは思わなかったけれど、印象に残るということもなかった。

アンジェラ・ヒューイットは、ハイペリオンに移籍している。
ハイペリオンは、別項で書いたように最近MQAでの配信を開始している。

アンジェラ・ヒューイットの最新録音、
モーツァルトのピアノ・ソナタも、MQAでTIDALで聴ける。

今回聴いたのは二枚目のほう。
MQAだから、ハイペリオンだから聴いてみよう、
そんな軽い気持からだったけれど、
最初に鳴ってきた音を聴いた時から、
内田光子のモーツァルトのピアノ・ソナタを聴いた時のことを思い出していた。

今回聴いたアンジェラ・ヒューイットのアルバムと曲目が重なる。
フィリップスからの内田光子のデビュー盤を聴いた時の情景が浮んできそうだった。

それから四十年ほど経ってのアンジェラ・ヒューイットのモーツァルト。
この演奏が最高とまではいわないけれど、
聴いていて、実に気持いい。

演奏も音も素晴らしい。
気持ちのよいピアノの音がしている。