正しいもの(その24)
この項で何度も書いてる井上先生の、
《ブルックナーが見通しよく整然と聴こえたら、それが優れたオーディオ機器なのだろうか》。
ステレオサウンド 94号(1990年春)の特集、
CDプレーヤーの試聴でのEMTの921の試聴記の最後に、こう書かれていたから、
このころの音の傾向についての井上先生のあえてのひとことなのだろう、と当時は受けとめていた。
一週間ほど前に、ある訃報に接した。
その時、そうだったのかも──、と思った。
CDプレーヤーの試聴記だから、
井上先生は《それが優れたオーディオ機器なのだろうか》とされているが、
《それが優れた音なのだろうか》としたら、どうか。
そのことに気づいた時、
井上先生のこのひとことは、ある人に向けてのメッセージだったのかもしれない、と。
ほんとうのところは、いまとなってはわからないし、
ある人が、この井上先生の試聴記をどう読んだのかもわからない。
それでも、そんなふうにおもえてならない。
REPLY))
見通しが良く整然と役者が並ぶオーディオ機器は、それはそれで素晴らしいですよね。でも、求めているのは感動です。そういう技術で作られた音場で感動するのかは別の話だと思います。では、感動はなにでするのか、これはその人の経験そのものであり、だからこそ、オーディオは高度な趣味なのではないでしょうか。