オーディオにとって真の科学とは(その3)
ケーブルの交換で音が変ることを、オカルトだ、と決めつける人たちが昔からいる。
彼らは「オカルトだ」の次に口にするのが「オーディオは科学だ」である。
そういう主張をする人の中に、こんな人がいた。
「菅野先生はケーブルで音が変ると言われていない」
だからケーブルで音が変ることはありえない、ということだった。
菅野先生は、ケーブルによる音の違いについて、針小棒大に語られてはいない。
でもケーブルによる音の変化は認められているし、
ステレオサウンドのバックナンバーで確認できることだ。
にも関わらず、その人はたまたま彼が目にした範囲で菅野先生がケーブルについて語られていないから、
「菅野先生はケーブルで音が変ると言われていない」ということになる。
これは極端な例とは思う。
でも、この人も「オーディオは科学だ」というのである。
こういう例もある。
スピーカーケーブル長さを極端に変えても音は変らない、という主張だった。
同じ品種のスピーカーケーブルで、ひとつは1m、もうひとつは100mほどにする。
これだけ長くするとケーブルの直流抵抗も無視できない値になる。
1mと100mとでは、スピーカーからの音圧にはっきりとした差が出る。
そのことは、ケーブルで音は変らない、と主張する人も認めている。
けれどその先がある。
100mのスピーカーケーブルで減衰した分はボリュウムをその分上げれば同じになる。
よってケーブルの長さ(1mと100mとでは)で、音は変らない、というものだった。
「オーディオは科学だ」という人すべてが、こんな人ではない。
ケーブルで音が変ることを私は認めているし、同時に「オーディオは科学だ」と考えている。
私だけではない、多くの人が「オーディオは科学だ」という認識の上に立っている。
その上でオーディオにおける観察──先入観なしに聴くこと──の重要性を正しく認識している。
その違いが「オーディオは科学だ」にもある。