Archive for category ALTEC

Date: 12月 11th, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その6)

604Eのネットワーク、N1500Aは、クロスオーバー周波数は1.5kHzで、
減衰特性はウーファーは6dB/oct.、トゥイーターは12dB/oct.。
604-8Gのネットワークとはスペックの上では減衰特性が異るわけだが、
もっとも大きな違いはスペックに、ではなく、回路構成にある。

いま市販されている大半のスピーカーのネットワークは、並列型であろう。
604-8Gのネットワークも並列型である。

パワーアンプから見た場合、ウーファーとトゥイーターに、それぞれネットワークの回路がはいったうえで、
並列接続されたかっこうになっている。だからこそ、バイワイアリングという接続方法も可能になる。

直列型は、文字通り、ユニットを直列接続した回路構成となっており、
ウーファーのマイナス端子とトゥイーターのプラス端子が接続される。
12dB/oct.の場合は、並列型と同じようにトゥイーターの極性を反転させることもある。

604Eと直列型のネットワークN1500Aの組合せもその例にもれず、
ウーファーとトゥイーターのマイナス端子同士が接続される。
一見、トゥイーターの極性を反転しているかのように思えるが、
N1500Aの入力端子のプラス側は、トゥイーターのプラス側に接がっている。

同軸型ユニットの選択(その5)

おそらく杉井氏は、604-8Gと604-8Hのネットワークを混同されていたのだろう。
勘違いの発言だったのだろう。

604-8Hはマンタレーホーンを採用している関係上、ある帯域での周波数補正が必要となる。
それに2ウェイにも関わらず、3ウェイ同様に中域のレベルコントロールも可能としたネットワークであるため、
構成は複雑になり、使用部品も増えている。

だから、杉井氏の発言は、604-8Hのネットワークのことだろう。
勘違いを批判したいわけではない。

この記事の問題は、その勘違いに誰も気がつかず、活字となって、事実であるかのように語られていることである。

この試聴記事に参加されている篠田氏は、エレクトリでアルテックの担当だった人だ。
アルテックについて、詳しいひとのはずだ。
604-8Gと604-8Hのネットワークについて、何も知らないというのはないはずだ。

本来なら、篠田氏は、杉井氏の勘違いを指摘する立場にあるべきだろうに、
むしろ「アルテックの〝あがき〟みたいなものがこの音に出ている」と、肯定ぎみの発言をされている。

Date: 12月 6th, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その4)

手もとに604-8Gがあるから、ネットワークの内部を見ることができる。
シャーシー内部には、鉄芯入りのコイルが2個、コンデンサーが3個、
あとはレベルコントロール用の巻線型のアッテネーターだけである。

12dB/oct.のハイカットフィルターには、コイルとコンデンサーがひとつずつ、
18dB/oct.のローカットには、コイルはひとつ、コンデンサーはふたついる。
ハイカット、ローカットあわせて2個のコイルと3個のコンデンサーは、最低でも必要である。

インピーダンス補正や周波数特性をいじるのであれば、さらにコンデンサーやコイルが必要になる。
604-8Gの専用ネットワークには、必要最小限の部品しか収められていない。
インピーダンス補正も周波数のイコライジングを行なう部品は、何ひとつない。

アルテックのサイトから、604-8Gのネットワークの回路図がダウンロードできる。
見れば一目瞭然である。どこにも杉井氏が指摘されるようなところは、ない

杉井氏の「解析」とはどういうことなのだろうか。

Date: 12月 6th, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その3)

604-8Gに関して、こんな記事が出ていたことがある。
管球王国 Vol.25において、604シリーズ6機種の試聴記事が載っている。

そこで、篠田寛一氏が、604-8Gに604EのネットワークN1500Aを使うと、
「604Eに限りなく近い音で鳴る」と発言されている。
これを受けて、杉井真人氏(どういう方なのかは知らない)が、
「8Gのネットワークを解析するとわかるのですが、かなりイコライジングしているんです。
音質補正回路みたいなものが入っていて、
ある帯域にピークやディップを持たせたりして独特の音作りをしています」と補足されている。

604-8Gのネットワークには型番はない。
クロスオーバー周波数は1.5kHzで、ウーファーのハイカットは12dB/oct.、
トゥイーターのローカットは18dB/oct. となっていて、レベルコントロールは連続可変で、ツマミはひとつ。

この専用ネットワークは、ほんとうに杉井氏の指摘のとおり、
回路構成によって独特の音作りを行っているのだろうか。

Date: 12月 6th, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その2)

同軸型ユニットを中心としたワイドレンジのスピーカーシステム構築を考えれば、
タンノイとアルテックの同軸型ユニットを、私と同世代、上の世代の方は、最初に思い浮かべるだろう。

タンノイにするかアルテックにするか……。
別に迷ってはいなかった。最初に手にしたほうを使おう、そういうつもりでいたからだ。

主体性のない、やや受け身のスピーカー選びだが、それでも、モノとの巡り合いがあるだろうから、
ひとつくらい、こんなふうにスピーカーを選ぶのもいいかもしれない。

タンノイには、五味先生の本でオーディオと出合っただけに、その想いは簡単には語れない。
アルテックは、ここに書いたことをきいて知っていただけに、
一度は、自分の手で鳴らしてみたいと、ここ数年想い続けてきた。

タンノイとアルテック、ふたつとも手に入れてシステムを組むというのは、いまは無理だ。
だから、最初に私のところに来てくれたほうを使おうと決めた。そしてアルテックが到着した。

Date: 12月 2nd, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その1)

JBLの4343について、これまで書いてきた。ワイドレンジについては、いまも書いている。
これらを書きながら考えていたのは、放射パターンを考慮したときの同軸型ユニットの優位性について、であり、
同軸型ユニットを中核としたスピーカーシステムの構想について、である。

アルテックの604シリーズ、タンノイのデュアルコンセントリック・シリーズ──、
両社の伝統的ユニットを使い、最低域と最高域を、ぞれぞれ別のユニットで補う。

すでに、実際の製品として、アルテックには6041があり、タンノイにはキングダム・シリーズがある。
にもかかわらず、自分で確認したいこと、試してみたいことが、いまもくすぶっている。
そのくすぶりが、書くことで次の段階へとうつろうとしている。

今日、604-8Gが届いた。

Date: 12月 9th, 2008
Cate: ALTEC, ワイドレンジ, 瀬川冬樹

ワイドレンジ考(その29)

先に書いているが、Model 19と604-8Hから、アルテックは、システムは2ウェイ構成ながら、
多素子のネットワークによって3ウェイ的レベルコントロールを実現している。

BBCモニターのようにレベルコントロールはないものもあるが、この多素子のネットワークで、
スピーカーシステムのトータルの周波数特性をコントロールする(ヴォイシング)手法は、
イギリスのスピーカーが、以前から得意としているところである。
BBCモニターもそうだし、タンノイのスピーカーもかなり以前からそうである。

Model 19の、レベルコントロールをいじったときの周波数特性が発表されている。
中域のツマミを反時計回りにいっぱいにまわし、高域のツマミを時計回りにいっぱいにまわす、
この時の周波数特性は2kHzが約10dB近く下がる。その上の帯域は徐々にレベルが上がる。

瀬川先生が、6041、620Bのレベルコントロールをどのように調整されたかはわからないが、
かなり大胆にいじっておられたことは書かれていた。
上の周波数特性からもわかるように、おそらく中域をかなり絞り、高域はある程度あげることで、
瀬川先生が苦手だった中域の張りの抑えられるとともに、
BBCモニター的なヴォイシングに、自然とそういう音にもっていかれたのだろうか。

実は、604-8KS(604-8Hのフェライトモデル)がはいった612Cを、一本だけ所有している。
モノーラル専用なわけで、同じようにレベルコントロールをいじっている。

「瀬川冬樹氏のこと(その9)」に書いたように、
瀬川先生は620Bに、アキュフェーズC240とマイケルソン&オースチンのTVA1を組み合わされている。
架空の話になってしまうが、瀬川先生がクレルのPAM2とKSA100のペアを聴かれていたら、
絶対アルテックの620Bか6041と組み合わされていたはずだ。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 6041, ALTEC, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その27)

アルテックの6041のユニット構成は、604-8H同軸ユニットに、
サブウーファーとして416-8BSW(低f0の416-8B)に、トゥイーター6041STを組み合わせている。

瀬川先生も指摘されていたが、トゥイーターの質感に、やや残念なところがある。
詳しくは書かないが、6041STはアルテック純正のトゥイーターではなく、他社製のOEMである。

6041はその後、フェライト化された604-8KSと416-8CSWに変更された6041IIになるが、
JBLの4343が、4350をリファレンスとして、4341から確実な改良を施されて、
システムとしての完成度を高めているのから見ると、
6041はそのものが急拵えの感を拭えず、しかも地道な改良が施されたわけでもない。

同軸型ユニットにこだわりつづけているタンノイが、キングダムで高い完成度を実現したのを見ると、
もしアルテックが6041に本腰をいれていたら……、と思わずにいられない。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 6041, ALTEC, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その26)

アルテック、はじめてのワイドレンジ設計のModel19について、瀬川先生はこう書かれている。
     ※
604Eをオリジナルの612Aエンクロージュアごと(あの銀色のメタリックのハンマートーン塗装は素敵だ)入手して聴いていたこともあるが、私にはアルテックの決して広いとはいえない周波数レンジや、独特の張りのある音質などが、どうも体質的に合わなかったと思う。私の昔からのワイドレンジ指向と、どちらかといえばスリムでクールな音の好きな体質が、アルテックのファットでウォームなナロウレンジを次第に嫌うようになってしまった。
しかし最近、モデル19を相当長時間聴く機会があって、周波数レンジが私としてもどうやら許容できる範囲まで広がってきたことを感じたが、それよりも、久々に聴く音の中に、暖かさに充ちた聴き手にやすらぎをおぼえさせる優しさを聴きとって、あ、俺の音にはいつのまにかこの暖かさが薄れていたのだな、と気がついた。確信に満ちた暖かさというのか、角を矯めるのでない厳しさの中の優しさ。そういう音から、私はほんの少し遠のいていて、しかし、それが私のいまとても欲しい音でもある。おもしろいことにJBLが4343になってから、そういう感じを少しずつ鳴らしはじめた。私が、4341よりも4343の方を好ましく思いはじめたのも、たぶんそのためだろう。もっと齢をとったら、もしかして私もアルテックの懐に飛び込めるのだろうか。それともやはり、私はいつまでも新しい音を追ってゆくのだろうか。
(ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ ALTEC」号より)
     ※
いま読むと、ひじょうに興味深いことを書かれている。
その瀬川先生が、6041をどう評価されていたかは、ステレオサウンド 53号をお読みいただきたい。
手元にその号がないので、引用したいところだが残念ながら無理。

記憶では、レベルコントロールを大胆にいじることが前提だが、かなり高い評価だったはず。

アルテックはModel19、マルチセルラホーンからマンタレーホーンになった604-8Hから、
2ウェイ構成ながら3ウェイ的なレベルコントロールが可能なネットワークになっている。
604-8Hを搭載した620Bに関しても、瀬川先生は、レベルコントロールを積極的にいじることで、
ご自身の音に仕上げられる可能性を感じた、という趣旨の記事を書かれている。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 6041, ALTEC, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その25)

マルチウェイ化にともなう水平・垂直両方向の指向性の不整合に対する解答のひとつが、
同軸ユニットだと私は捉えている。
そして同軸ユニットをうまく使うことが、4ウェイのシステムへの、解答のひとつでもあろう。

4343が日本で爆発的に売れていた時期に、アルテックから6041が登場した。
型番から推測できるように、アルテックの代表的なユニット604を中心にまとめあげた、
同社としては初のワイドレンジ指向のスピーカーである。

JBLが積極的にユニットを開発し、それらを組み合わせて3ウェイ、4ウェイと、
多マルチウェイ・システムを構築しワイドレンジを実現していくのに対して、
アルテックは、小改良をユニットに施すことで、少しずつではあるが確実にレンジを広げてきた。

6041の数年前に登場したアルテックのコンシュマーモデルのModel19とModel15は、
やはりアルテック伝統の2ウェイ構成である。
どちらも、高域用ドライバーに、断面がミカンを輪切りにしたような形を持つフェイズプラグを採用、
さらにネットワークによる周波数コントロールも併せることで、
従来のアルテックの2ウェイ・システムがなだらかに高域が落ちていくのに対して、
20kHzまでほぼフラットを実現するとともに、アルテックならではの高能率もほとんど犠牲にしていない。

厳密に言えば、ネットワークで周波数コントロールを行なっている分、
同様のユニット構成のA7と比較すると、やはり能率は、少しだが下がっている。