Archive for category 4343

Date: 1月 3rd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その31)

アンプの性能を表すSN比が、聴感上という枕詞がつくようになったとはいえ、
スピーカーについても語られるようになったのは、
ダイヤトーンの3ウェイ・ブックシェルフ型DS1000からだったと、私は思っている。

とはいえそれ以前から高SN比の試みは少しずつではあるが、為されていた。
ダイヤトーンのスピーカーでいえば、
DS505とDS5000の間に登場した3ウェイ・ブックシェルフ型のDS503である。

DS503は、DS505同様、ウーファーにはアラミドハニカム振動板、
スコーカーとトゥイーターはボロン採用のDUD構造のドーム型を採用。
DS505が密閉型に対し、DS503はバスレフ型となっている。

ペアで25万円の普及クラスのスピーカーであるが、たとえばバスレフポートは、
通常のスピーカーが紙ポートを使用しているのに──4343ですら紙ポートである──、
DS503のダクトは、3mm厚のアルミ引抜きパイプである。

ダイヤトーンによると、紙ポートだと約400Hz付近に一次共振が表われる。
DS503は3ウェイなので、ウーファーのクロスオーバー周波数は500Hz。
ウーファーの受持ち帯域内で、バスレフポートの一次共振が起こることになる。
アルミポートの一次共振は1500Hzと、3オクターブほど高くなっている。

さらにポート内は塗装仕上げとなっている。
気がつき難い、こんなところまで仕上げているのは、やはりローレベルのクォリティを向上させるため、
聴感上のSN比を向上させるためである。

バスレフポートを通って出てくる空気は、ポート内の表面がざらついていると風切り音を発生させる。
DS503の塗装は、それを抑えるためである。

ヤマハが1988年に発表した、負性インピーダンス駆動とバスレフ型エンクロージュアを
組み合せたYST方式(発表当時はAST方式と呼んでいた)のバスレフポート内には、
風切り音を抑えるためにフェルトが貼られていた。
しかもただフェルトを使うだけでなく、柔軟剤でさらに柔らかくすることで、
徹底して風切り音を抑えるよう工夫されていた。

余談だが、柔軟剤も市販されているものすべて集めて試したと聞いている。

Date: 1月 3rd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その30)

テクニクスのSB-E500を除いて、国産の4ウェイ・スピーカーは、
すべてコーン型とドーム型もしくはリボン型などのダイレクトラジエーターのユニットを採用しているだけでなく、
平面振動板、ハニカム素材やボロン、セラミック系など、高剛性で内部音速の速い素材を積極的にとり入れている。

もちろん4343もピストニックモーションの良好な帯域で、それぞれのユニットを使うために、
帯域を4分割しているのだろうが、JBLの場合、ピストニックモーションの積極的な追求よりも、
むしろ全帯域にわたってエネルギーレスポンスの充実・フラット化と
水平方向の指向性のワイドレンジ化を優先しているように思える。

同じ4ウェイという形態でも、優先的に追求している点は異っている。

もう1点違うのは、聴感上のSN比向上がある。
ダイヤトーンのDS5000がそうだし、ビクターのZero-L10では、さらにはっきりしている。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その29)

ビクターZero-L10の専用置き台ST-L10は、ダイヤトーンのDK5000とは違い、調整代(しろ)がない。
2本の角材をX字型の桟で連結した構造で、寸法もZero-L10にぴったりくるようになっている。

ST-L10上で、Zero-L10を多少前後させることで、調整できないことはないけれど、
見た目を考えると、面を揃えたほうがしっくりくる。
もちろん置き台とスピーカーとの間に、スペーサーを挿むこともできるが、
メーカーの主張としては、置き台とスピーカー底面の接触面積を決めておくことで、
音を仕上げているわけで、まずは何も挿むことなく取り組むべきだろう。

Zero-L10は、Zero1000の3ウェイ・プラス・スーパートゥイーター的構成ではなく、
DS5000同様、中低域の再現能力を高めるための本格的な4ウェイである。

ウーファーとミッドバスは、セラミック・ファイバーとクロスカーボンの複合素材を、
ミッドハイとトゥイーターは、ピュアファインセラミックを振動板に採用している。
振動板を剛性を高め、内部音速の速い素材を使うことで、
分割振動をできるだけ上の帯域に移動させ、ピストニックモーション領域の拡大を図っている。

ピストニックモーションの追求こそ、4343と国産4ウェイ・スピーカーとの、
もっとも大きな違いだと、私は考えている。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その28)

ダイヤトーンが、アコースティックキューブと呼んでいたDK5000は、
カナダ産カエデを使い、ブロックを12分割したランバーコア構成にしたもので、
先に述べたように上部センターに無酸素銅のピンが打ち込まれている。
アクセサリーとして直径25mm、厚み1.6mmの無酸素銅のスペーサーが8枚ついている。

通常の銅よりも無酸素銅は振動の減衰が早い。
同じ直径、厚みのものを弾くと、チーンという音の鳴りの時間が無酸素銅は短いことからもわかる。

このスペーサーを利用することで、スピーカー底面への接触面積は減り、より自由な鳴り方になるとともに、
当然、この銅スペーサーの音も、わずかとはいえ、音にのる。

DK5000の後には、ヤマハからスペーサー・セットが発売された。
無酸素銅のスペーサーの他に、セーム革やフェルトなど、素材の異る円状のスペーサーの詰め合わせだった。

DS5000(DK5000)が登場した1982年ごろから、
置き台、スタンドに、専用のモノがぼつぼつ出てくるようになった。

セレッションのSL6も、木製の専用スタンドが用意されていたし、
SL600ではクリフストーンスタンドと呼ばれる鉄製で、パイプの中に石が詰め込まれたものになっている。
ダイヤトーンからも自社製ブックシェルフ・スピーカー用に、DK5、DK10などが用意されていた。
ビクターやヤマハからも、木製のスタンドが登場している。

それまでのキャスター付きの、間に合わせ的なつくりのモノから、
しっかりとしたつくりで、組み合せるスピーカーとのことを配慮しはじめたモノへと変化していっている。

そして国産4ウェイ・スピーカーで、1985年と遅くに登場したビクターのZero-L10には、
専用の置き台ST-L10が用意されていた。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その27)

DK5000は、何もDS5000専用というわけではない。
ステレオサウンドの試聴室では、リファレンス・スピーカーとして使ってきたJBLの4344は、
常時DK5000の4点支持だった。

床にベタ置きとDK5000を使ったときで何か異るのか。
まずスピーカーの底板の鳴りが大きく変化する。
ベタ置きでは、底板を床でダンプするようなもので、
底板の鳴りが減った分、主に天板、その他の部分の鳴りが大きくなる。
このことはスーパートゥイーターのところで触れている。

DK5000や角材でスピーカーを浮かすと、底板の鳴りは、いくぶんフリーになる。
さらに4点支持でも、DK5000をどの程度、スピーカーの底板にかませるかによって、
底板の鳴りをコントロールできる。

ためしにDK5000がスピーカーからはみ出ないように、四隅をきちんと揃えた音と、
DK5000のセンターピンが、スピーカーの四隅ぎりぎりになるまで外側にはみ出させた音、
まずはこのふたつの状態の音を聴いてみてほしい。

低音の鳴り方、締まり具合の変化が大きいはずだ。

DK5000を四隅に揃えた状態とは半分かかった状態では、底板がフリーになっている面積が違う。
当然底板の鳴り方が変化し、エンクロージュア全体の鳴り方も変化している。

一般的にスピーカーユニットは前面に取りつけてあるため、スピーカーの重心は前面寄りにある。

だから、さらなる調整として、前側2つのDK5000と後ろ側2つのDK5000のかませ具合を変えてみる。
前側は四隅からはみ出ないようにして、後ろ側は半分だけかませてみる。
このへんは自由に試してみてほしい。

DK5000にかかる荷重が変化するということは、おそらく床の振動モードも変化しているはずである。

スピーカーの設置場所は、壁からの距離だけの関係だけでなく、床との相関関係も大きい。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その26)

4343とDS5000のいちばんの大きな違いは、ともにエンクロージュア底面も仕上げされたフロアー型だが、
DS5000には、DK5000という専用のベース(脚)が用意されていることだ。

フロアー型スピーカーだから床に直接設置して、それでいい音が得られるわけではない。
台輪(ハカマ)付きであっても、多少持ちあげて鳴らしたほうが好結果のことが多い。

床からの反射ということだけでなく、スピーカーと床との相関関係は、
スピーカーの重量が重く、エンクロージュア底部の面積が広いモノほど、密接なものとなる。
この関係をどう捉え、どうコントロールするかが、スピーカー設置、
特にフロアー型スピーカーの使いこなしの最大のポイントといえよう。

DK5000は一辺9cmの、良質の木の立方体のブロックで、上面センターに金属のピンが打ち込まれている。
8個1組のDK5000で、DS5000を4点支持、もしくは3点支持で持ちあげる。
アンプやCDプレーヤーもふくめて、3点支持だと音の輪郭がくっきりする傾向がある。
4点支持では、安定した、しなやかな音になる。

スピーカーの場合、床が完全にフラットのことは稀なため、
3点支持の方がガタツキなくセットしやすい。
4点支持だと、ガタつかないまでも、4つすべてのDK5000の上に、均等に荷重がかからないことが多々あり、
ひとつだけ手で容易に動かせてしまうものが出てきたりする。

そのままにしておくと、4点支持の良さは活きてこない。
なんらかのスペーサーを、床とDK5000の間に挿し込み調整する必要がある。
当然、スペーサーの素材によっても音は違ってくる。
私の経験では、和紙の使用がいい結果をもたらしてくれることが多かった。

最近では「レベラー」というコンクリートがある。
通常のコンクリートよりも、水のようにさらさらしたもので、
水は自然に水平が出るように、このレベラーも、流し込むだけいい。
ただし通常のコンクリートよりもかなり高価だけど。

Date: 1月 1st, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その25)

DS5000が、4343を意識しているのは外形寸法の他に、ソニーのSS-G7、G9同様、
フロントバッフルに、ウーファーとミッドバス以上3つのユニットの間に、スリットをいれている。

もっとも4343の場合は、横向きで使うことを考慮して、
上3つのユニットを取りつけたバッフルの向きを90度変えられるように、
フロントバッフルを2分割したため生じたスリットだが、
DS5000は、エンクロージュア表面を伝わる振動をカットするためのスリットという違いはある。

この他にも違いはいくつもある。
ウーファーの位置も、4343がエンクロージュア下部ぎりぎりまで下げているのに対し、
DS5000のウーファーの位置はできるだけ上に取りつけようと、
他の3つのユニット配置も考慮されている。
4つのユニットは、4343と異りぎりぎりまで近接している。
おそらくこれ以上近づけたらフロントバッフルの強度が不足するのだろう。

レベルコントロールも、4343は、上3つの帯域がそれぞれ可変なのに対し、
DS5000はウーファーとミッドバスのレベルは固定され、ミッドハイとトゥイーターのみ可変だ。
これはDS505もそうで、ミッドバス帯域のレベル設定に自信があることの現われだろうし、
中低域再生能力を高めるための4ウェイ構成であると語っている。

DS5000の音は、ダイヤトーンのスピーカーの中で(すべて聴いたわけではないが)、
意外に新しさは少なく、そのかわり、もっともゆとりある音を聴かせてくれたように記憶している。

Date: 1月 1st, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その24)

どこかに試作品っぽいところを残している4S-4002P、
4S-4002Pの経験を活かして、売れ筋の価格帯で腕試しをしたともいえるDS3000、
この2機種開発の経験があるからこそ、DS5000の完成度は高いものになっているといえよう。

いわば力作である。それを、なにも4343と同寸法に作ることはないではないか。
もっと自信をもって、最良と考えられるサイズにすればいいのに……、
それともあえて4343と同寸法という制約を自ら設けて、挑んだということか。

モノは試作品を経て製品になり、そして商品になることで完成する。
資本主義というよりも、商業主義の世の中では、製品のままでは、会社は成り立っていかない。

だから売るため売れるために、4343と同寸法にしたことも理解できないことはないといいつつも、
DS5000と同じようなユニット構成で、6年後(1988年)に登場したDS-V9000のエンクロージュアの寸法は、
W65.2×H108×D49.7cmで、4343よりも奥行きが長く、背が低くなっている。

だからDS-V9000の完成度は、DS5000よりも高い、と言えないところがスピーカーの面白いところだ。

DS-V9000のトゥイーターとミッドハイのドーム型ユニットの振動板は、新開発のB4Cである。
DS5000も、ボロンを採用しているが、
ダイヤトーンにとってボロンの採用はこれがはじめてではなく、DS505に搭載している。
その後、3ウェイのブックシェルフ型DS501にも使うなど、
DS5000開発時には、ダイヤトーン技術者にとって、ボロンは新素材ではなく、
手なれた素材だったのかもしれない。

DS-V9000は、ステレオサウンドの試聴室で何度か聴いている。
DS5000とDS-V9000のあいだに、ダイヤトーンは、
DS1000やDS2000、これらのHR板、それにDS10000も開発している。
それらの成果が活きているのだろう、スピーカーとしては、DS5000よりも高性能になっている、
そんな印象とともに、新素材振動板の音が際立っているとも受けとめた。

Date: 12月 31st, 2008
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その23)

ダイヤトーンは、DS5000の5年前(1977年)に、フロアー型の4ウェイ・スピーカーを発表している。
ただしコンシュマー・モデルではなく、放送局用として開発されたモデルで型番も4S-4002Pと、
2S305の流れを汲むものとなっている。
40cm口径のウーファー(ハニカム振動板)、18cm口径のミッドバス(これもハニカム振動板)、
5cm口径のミッドハイ、トゥイーターのみドーム型で口径は2.3cm。
エンクロージュアはバスレフでも密閉型でもなく、ウーファーと同口径のパッシヴラジエーターを採用している。
そのため、かなり大型といえ、高さは133.6cm、重量は135kg。
上3つのユニットは両端にハンドル付きのサブバッフルに取りつけられている。
エンクロージュアのサイドはウォールナット仕上げにはなっているが、
全体的な雰囲気は素っ気無い、やや冷たい感じを受ける。

ステレオサウンド 45号のモニタースピーカー特集で取りあげられているから、
一般にも市販されたと思われるが、いままで見たことはない。

同じ4ウェイでも、4S-4002PとDS5000はずいぶん雰囲気が違う。
DS5000からは、つくり込まれているという印象が伝わってくる。

資料や写真のみでの判断するしかないが、
4S-4002Pは、とりあえず4ウェイ・スピーカーを作ってみました、という感じを、
(私だけだろうが)どうしても受けてしまう。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その22)

ダイヤトーンのDS505は見た目からして、
アラミドハニカムの振動板をウーファーとミッドバスに採用したとで、
それまで紙コーンが黒色に対して、山吹色といったらいいか、色合いからして、それまでと異る。
ミッドハイ、トゥイーターのドーム型も振動板とボイスコイルボビンを一体化したDUD構造とするなど、
いわばダイヤトーンとしての新世代のスタートを切るスピーカーでもあった。

それをブックシェルフ型で、価格も38万円(ペア)というところで出してきて、
市場の反応を見るというのが、日本のメーカーらしいといえよう。

DS505の音だが、実は一度も聴いたことがない。なかなか聴く機会がないまま、
ステレオサウンドで働くことになり、しばらくしたらDS5000が登場してきた。

ダイヤトーン新世代スピーカーの頂点にあたるモデルとして開発されたDS5000が、
ステレオサウンド試聴室に搬入されたとき、
ダイヤトーンの技術者が「4343が置いてあった場所にそのまま置けます」と言ったのをはっきりと憶えている。

4343の横幅は63.5cm、DS5000の横幅も63.5cmは同じで、
4343からの買い替えを狙って、この横幅に決定した、とのことだった。
奥行きは、4343が43.5cm、DS5000が46cmとすこしだけ大きいが、
4343はサランネット装着すると、奥行きは46cmくらいになる。
高さは、4343が105.1cm、DS5000が105cmと、徹底して4343を意識した寸法となっている。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その21)

スレッショルドの800Aは、1976年当時、118万円だった。
価格的に4343とほぼ同じだが、まったく無名の新興ブランドということもあってか、
実物を見たこともないという人も少なくない。

けれど、800Aが、国産ブランドのアンプの技術者に与えた影響は、4343のそれと匹敵するかもしれない。
800Aの登場以降、国産アンプの謳い文句に「Aクラス」の文字が増えている。
思いつくまま挙げれば、テクニクスのクラスA+(SE-A1に採用されている)と
ニュークラスA(SE-A3などプリメインアンプにも採用)、
ビクターのスーパーAクラス、デンオンのリアルバイアスサーキットによるAクラス、
Lo-DのノンカットオフA動作、などがある。

800Aも登場したばかりのころは、正確な情報がなかったため、純Aクラス・アンプのように思われたが、
実際は基本動作はABクラスで、出力が増えてBクラス動作に移行したとき、
通常ならば発生するスイッチング歪、クロスオーバー歪を、
特殊なバイアス回路の採用で発生そのものを抑えている。

これに刺激されて、各社から、独自のノンスイッチングアンプが登場したわけだ。
このとき、ステレオサウンドは、国産メーカー各社のアンプ技術者にアンケート調査を行なっている。
自社の技術の特徴と、他社の同様の技術の違いについて回答させたものをまとめた記事で、
技術者が自社製品の技術について語るだけとは異り、ひじょうに興味深い内容だった。

無線と実験やラジオ技術誌がやらなかった記事を、
ステレオサウンドがわかりやすく、しかもつっこんだ内容で、まとめてくれていた。

同様のアンケートを、4ウェイ・スピーカーを発表したメーカーの技術者に対して行なってくれていたら、と思う。
4343をどう捉えていたのかが、はっきりとわかり、ひじょうに面白い記事になったはずだ。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その20)

4343でコヒーレントフェイズを実現するのは相当に困難なことだが、
4ウェイ・スピーカーでコヒーレンスフェイズに近づける、ということになれば、
ホーン型ユニットを使わずに、
ダイレクトラジエーター(ドーム型、コーン型、リボン型など)のユニットで構成すれば、
それぞれのユニットの音源の位置関係のズレは、かなり小さいものとなる。

4343を意識した4ウェイ・スピーカーが、国産ブランドからいくつも登場した。
それらのスピーカーを見ていくことは、それぞれのブランドのスピーカー技術者が、
4343をどう捉えていたのか──長所はどこで、そして欠点はどこなのか、を間接的に知ることといえよう。

1976年、高効率Aクラス・アンプを謳い、
Aクラスで100Wの出力を可能としたスレッショルドのパワーアンプ、800Aが登場した。
当時のAクラス・アンプといえば、パイオニア/エクスクルーシヴのM4が代表的製品で、
出力は50W+50Wだった。空冷ファンを備えていたが、発熱量はかなりのものだった。

それが同じステレオ機で、出力が4倍の200W+200W。800Aもファンによる冷却だが、
発熱量はM4の4倍の出力をもつアンプとは思えないほど少なく、
筐体がカチンカチンに熱くなるということはなかった。

800Aは、二段構えの電源スイッチで、通常はスタンバイスイッチを入れっぱなしにしておき、
使用時にオペレートスイッチをいれるという仕組みで、
冷却ファンも風量を2段階で切り換え可能にするなど、家庭で使うことを配慮した、
アメリカのハイパワーアンプとは思えない面ももっていた。

800Aはそれほど日本には入荷していないそうだが、
私がよく通っていた熊本のオーディオ店には、800Aがなぜか置いてあり、音を聴く機会にもめぐまれた。

800AかSAEのMark2500か──、LNP2Lに組み合せるパワーアンプはどちらかよいか、
買えもしないのに、そんなことを迷っていたりした。

800Aはいいアンプだと思っていた。
おそらく、いま聴いてもなかなかのアンプのように思う。
当時のアメリカのアンプとは思えないような、清楚な印象の音は新鮮だったし、
しかも秘めた底力も持ち合わせている、どこか、そんな凄みがあった。

「800A、いいなぁ」、と思っていたところに、
五味先生が、ステレオサウンドで再開されたオーディオ巡礼の一回目に、
「スレッショールド800がトランジスターアンプにはめずらしく、
オートグラフと相性のいいことは以前拙宅で試みて知っていた」と書かれていたので、
ますます800Aの印象は、私の中でふくらんでいった時期がある。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その19)

JBLの4343と同時代のスピーカーのなかには、ユニットの位置合わせにはじまり、
ネットワークの位相特性にまで配慮した、いわゆるリニアフェイズ、
KEFの言葉を借りればコヒーレントフェイズ指向のスピーカーが登場している。

KEFの#105がそうだし、UREIの813は、特許取得のタイムアライメント・ネットワークで、
同軸型ユニットのメリットを最大限に引き出そうとしていた。

それらのスピーカーと見比べると、4343のユニット配置は、コヒーレントフェイズの観点からは、
考慮されているようには思えない。

瀬川先生の4ウェイ・スピーカー構想をあれこれ妄想・空想していた私は、
4343でコヒーレンとフェイズを実現するには、どういうユニット配置にしたらいいのか、
そんなことも考えていた。

高校生が考えつくことは、やはり限られていて、
思いついたものといえば、ウーファーとミッドバスの前面にフロントショートホーンを設けることだった。

UREIの813のネットワークに関する技術的な資料が、当時あれば、
ネットワークによる補正も考えられるのだが、インターネットなどない時代だから、無理である。

となると、フロントショートホーンということになるのだが、
これを4343のスタイルを崩さずにうまくまとめることは、不可能といってもいいだろう。

スケッチという名の落書きを何枚も描いてみたけど、4343のようにカッコよくは、どうしてもならない。
それに、ホーンがついた分、どうしてもサイズが大きくなる。
4343のスマートさとは、正反対のモノになってしまう。

1976年発表の4343を、21世紀のいま、メインスピーカーとして使うために、どうしたらいいのか。
そのためには、4343というスピーカーについて、とことん知る必要がある。
それが、4343を4343足らしめている要素をいっさい損なうことなく、につながる。

4343を現代スピーカーとして甦らせることについては、いずれまとめて書きたいと思っている。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その18)

JBLの4343に憧れていて、瀬川先生の4ウェイ・スピーカー構想をあれこれ空想・妄想していた時期に、
ダイヤトーンのDS505は登場したから、個人的な衝撃は、意外なほどあった。

38cm口径のウーファーをベースとするならば、4ウェイ・スピーカーはかなり大型となるが、
30cm口径ならば、ミッドバスも大きくて16cm、10cm口径のフルレンジ一発でもいける、
うまくすれば、ブックシェルフ型の4ウェイもできるんじゃないか、そんなことも考えたことがあっただけに、
DS505は、アラミドハニカム振動板の特有の色とともに、
当時、高校生だった私には、現実的な4ウェイ・スピーカーであった。

クロスオーバー周波数の、500、1500、5000Hzからも、
3ウェイ・プラス・スーパートゥイーターという構成ではなく、
本格的な4ウェイ・スピーカーとして開発されていることがうかがえる。
ウーファーとミッドバスが小口径になった分、クロスオーバー周波数も高くなり、コイルの値も小さくなる。
このことも、当時、現実的と受けとめたことのひとつでもある。

ステレオサウンドの新製品の記事は、井上先生が書かれていた。
カラーページだった、その記事を何度もくり返し読んだ。

Date: 12月 30th, 2008
Cate: 4343, JBL, 瀬川冬樹

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その17)

瀬川先生の4ウェイ・スピーカー構想は、フルレンジから始めるか、
2ウェイから、なのかによって、ユニットの選択肢が変わってくる。

2ウェイからはじめるのであれば、タンノイやアルテックの同軸型ユニットも候補となる。
タンノイだと25cm口径のモノ、当時だとHPD295Aだ。
アルテックだと……、残念ながら30cm口径の605Bもラインナップから消えていたし、
25cm口径の同軸型は最初から存在しない。

もっとも6041の例があるから、システム全体は大型化するものの、604-8G (8H)からのスタートもあり、だろう。

もっとも、この場合、タンノイにしてもアルテックにしても、
同軸型のトゥイーターは最終的には、ミッドハイとなる。

こんなふうに、当時はHiFi Setero Guide を眺めながら、いろんなプランを、私なりに考えていた、
というよりも妄想していた。

スピーカーシステムというように、ひとつのパーツから成り立っているわけでなく、
いくつかのユニットとエンクロージュア、ネットワークなどの、「組合せ」である。

アナログディスク、CDのプレーヤー、アンプ、
スピーカーシステムの組合せからオーディオが成り立っているのと同じように、
スピーカーシステムもアンプそれぞれも、すべて組合せである。

アンプは、増幅素子(真空管やトランジスター、ICなど)、コンデンサー、抵抗などの組合せから成り立っているし、
回路構成にしても、ひとつの組合せである。

さらに言うならば、スピーカーユニットにしても、振動板、エッジやダンパー、
マグネットを含む磁気回路、フレームなどからの組合せである。

オーディオに求められるセンスのひとつは、この「組合せ」に対するものではないだろうか。