4343と国産4ウェイ・スピーカー(その31)
アンプの性能を表すSN比が、聴感上という枕詞がつくようになったとはいえ、
スピーカーについても語られるようになったのは、
ダイヤトーンの3ウェイ・ブックシェルフ型DS1000からだったと、私は思っている。
とはいえそれ以前から高SN比の試みは少しずつではあるが、為されていた。
ダイヤトーンのスピーカーでいえば、
DS505とDS5000の間に登場した3ウェイ・ブックシェルフ型のDS503である。
DS503は、DS505同様、ウーファーにはアラミドハニカム振動板、
スコーカーとトゥイーターはボロン採用のDUD構造のドーム型を採用。
DS505が密閉型に対し、DS503はバスレフ型となっている。
ペアで25万円の普及クラスのスピーカーであるが、たとえばバスレフポートは、
通常のスピーカーが紙ポートを使用しているのに──4343ですら紙ポートである──、
DS503のダクトは、3mm厚のアルミ引抜きパイプである。
ダイヤトーンによると、紙ポートだと約400Hz付近に一次共振が表われる。
DS503は3ウェイなので、ウーファーのクロスオーバー周波数は500Hz。
ウーファーの受持ち帯域内で、バスレフポートの一次共振が起こることになる。
アルミポートの一次共振は1500Hzと、3オクターブほど高くなっている。
さらにポート内は塗装仕上げとなっている。
気がつき難い、こんなところまで仕上げているのは、やはりローレベルのクォリティを向上させるため、
聴感上のSN比を向上させるためである。
バスレフポートを通って出てくる空気は、ポート内の表面がざらついていると風切り音を発生させる。
DS503の塗装は、それを抑えるためである。
ヤマハが1988年に発表した、負性インピーダンス駆動とバスレフ型エンクロージュアを
組み合せたYST方式(発表当時はAST方式と呼んでいた)のバスレフポート内には、
風切り音を抑えるためにフェルトが貼られていた。
しかもただフェルトを使うだけでなく、柔軟剤でさらに柔らかくすることで、
徹底して風切り音を抑えるよう工夫されていた。
余談だが、柔軟剤も市販されているものすべて集めて試したと聞いている。