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Date: 1月 9th, 2012
Cate: 40万の法則, D130, JBL, 岩崎千明

40万の法則が導くスピーカーの在り方(D130と岩崎千明氏・その14)

スピーカーユニット、それもコーン型ユニットの測定はスピーカーユニットだけでは行なえない。
なんらかの平面バッフルもしくはエンクロージュアにとりつけての測定となる。

IECでは平面バッフルを推奨していた(1970年代のことで現在については調べていない)。
縦1650mm、横1350mmでそれぞれの中心線の交点から横に150mm、上に225mm移動したところを中心として、
スピーカーユニットを取りつけるように指定されている。

日本ではJIS箱と呼ばれている密閉型エンクロージュアが用いられる。
このJIS箱は厚さ20mmのベニア板を用い、縦1240mm、横940mm、奥行540mm、
内容積600リットルのかなり大型のものである。

ステレオサウンド別冊HIGH-TRCHNIC SERIES 4で、後者のJIS箱にて測定されている。
IEC標準バッフルにしても、JIS箱にしても、
測定上理想とされている無限大バッフルと比較すると、
バッフル効果の、低域の十分に低いところまで作用しない点、
エンクロージュアやバッフルが有限であるために、ディフラクション(回折)による影響で、
周波数(振幅)特性にわずかとはいえ乱れ(うねり)が生じる。

無限大バッフルに取りつけた状態の理想的な特性、
つまりフラットな特性と比べると、JIS箱では200Hzあたりにゆるやかな山ができ、
500Hzあたりにこんどはゆるやかで小さな谷がてきる。
この山と谷は、範囲が小さくなり振幅も小さくなり、周期も短くなっていく。

IEC標準バッフルでは100Hzあたりにゆるやかな山ができ、400Hzあたりにごくちいさな谷と、
JIS箱にくらべると周期がやや長いのは、バッフルの面積が大きいためであろう。

どんなに大きくても有限のバッフルなりエンクロージュアにとりつけるかぎりは、
特性にもバッフル、エンクロージュアの影響が多少とはいえ出てくることになる。

ゆえに実測データの読み方として、複数の実測データに共通して出てくる傾向は、
いま述べたことに関係している可能性が高い、ということになる。

Date: 1月 7th, 2012
Cate: 40万の法則, D130, JBL, 岩崎千明

40万の法則が導くスピーカーの在り方(D130と岩崎千明氏・その13)

D130は厳密にはJBLの出発点とは呼びにくい。
実質的にはD130が出発点ともいえるわけだが、事実としてはD101が先にあるのだから、
D130はJBLの特異点なのかもしれない。

そのD130の実測データは、ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 4に出ている。
無響室での周波数特性(0度、30度、60度の指向特性を併せて)と、
残響室でのピンクノイズとアナライザーによるトータルエネルギー・レスポンスがある。

このどちらの特性もお世辞にもワイドレンジとはいえない。
D130はアルミ製のセンターキャップの鳴りを利用しているため、
無響室での周波数特性では0度では1kHz以上ではそれ以下の帯域よりも数dB高い音圧となっている。
といってもそれほど高い周波数まで伸びているわけではなく、3kHzでディップがあり、その直後にピークがあり、
5kHz以上では急激にレスポンスが低下していく。
これは共振を利用して高域のレスポンスを伸ばしていることを表している。
周波数特性的には0度の特性よりも30度の特性のほうが、まだフラットと呼べるし、グラフの形も素直だ。

低域の特性も、38cm口径だがそれほど低いところまで伸びているわけではない。
100dBという高い音圧を実現しているのは200Hzあたりまでで、そこから下はゆるやかに減衰していく。
100Hzでは200Hzにくらべて約-4dB落ち、50Hzでの音圧は91dB程度になっている。
トータルエネルギー・レスポンスでも5kHz以上では急激にレスポンスが低下し、
フラットな帯域はごくわずかなことがわかる。

周波数特性的にはD130よりもずっと優秀なフルレンジユニットが、HIGH-TECHNIC SERIES 4には載っている。
HIGH-TECHNIC SERIES 4に登場するフルレンジユニットの中には、
アルテックの604-8GやタンノイのHPDシリーズのように、
同軸型2ウェイ(ウーファーとトゥイーターの2ボイスコイル)のものも含まれている。
それらを除くと、ボイスコイルがひとつだけのフルレンジユニットとしてはD130は非常に高価もモノである。
HIGH-TECHNIC SERIES 4に登場するボイスコイルひとつのユニットで最も高価なのは、
平面振動板の朋、SKW200の72000円であり、D130はそれに次ぐ45000円。このときLE8Tは30000円だった。

Date: 1月 7th, 2012
Cate: 40万の法則, D130, JBL, 岩崎千明

40万の法則が導くスピーカーの在り方(D130と岩崎千明氏・その12)

JBLのD130の息の長いスピーカーユニットだったから、
初期のD130と後期のD130とでは、
いくつかのこまかな変更が加えられ、音の変っていることは岩崎先生自身も語られている。
とはいえ、基本的な性格はおそらくずっと同じのはず。
ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 4(1979年)で試聴対象となったD130は、
いわば後期モデルと呼んでもいいだけの時間が、D130の登場から経っているものの、
試聴記を読めば、D130はD130のままであることは伝わってくる。

同程度のコンディションの、製造時期が大きく異るD130を直接比較試聴したら、
おそらくこれが同じD130なのかという違いは聴きとれるのかもしれない。
でも、D130を他のメーカーのスピーカーユニット、もしくはスピーカーシステムと比較試聴してしまえば、
D130の個性は強烈なものであり、いかなるほかのスピーカーユニット、スピーカーシステムとは違うこと、
そして同じJBLの他のコーン型ユニットと比較しても、D130はD130であることはいうまでもない。

そのD130は何度か書いているようにランシングがJBLを興したときの最初のスピーカーユニットではない。
D101という、アルテックのウーファー、515のフルレンジ版といえるのが最初であり、
これに対するアルテックにクレームがあったからこそ、D130は生れている。

ということは、もしD101にアルテックのクレームがなかったら、
D130は登場してこなかったはず。
となれば、その後のJBLの歴史は、いまとはかなり異っていた可能性が大きい。
かりにそうなっていたら、つまりD130がこの世に存在してなかったら、
岩崎先生のオーディオ人生はどうなっていたのか、
いったいD130のかわり、どのスピーカーユニット、スピーカーシステムを選択されていたのか、
そしてスイングジャーナル1970年2月号のサンスイの広告で書かれた次の文章──、
この項の(その11)で引用した文章をもう一度引用しておく。
     *
アドリブを重視するジャズにおいては、一瞬一瞬の情報量という点で、ジャズほど情報量の多いものはない。一瞬の波形そのものが音楽性を意味し、その一瞬をくまなく再現することこそが、ジャズの再生の決め手となってくる。
     *
この文章(表現)は生れてきただろうか──、そんなことを考えてしまう。

おそらくD101では、D130のようにコーヒーカップのスプーンのように音は立てない、はずだからだ。
そう考えたとき、ランシングのD101へのアルテックのクレームがD130を生み、
そのD130との出逢いが……、ここから先は書かなくてもいいはず。

Date: 11月 6th, 2011
Cate: JBL

なぜ逆相にしたのか(その9)

バックプレッシャー型のコンプレッションドライバーの構造図を頭に思い浮べていただきたい。
ダイアフラムが前(ホーンに向って)に動くのと、後ろに動くのとではどちらが反応がはやく動くであろうか。

ドーム状のダイアフラムの頂点は後ろを向いている。
それにホーンがついている分だけの空気圧がある、などを考えると、
ダイアフラムが後ろに動くことが、前に動くよりもスムーズに素早く動くように思う。

つまり位相は逆相になってしまうが、入力信号の最初の部分(半波)に関しては、
バックプレッシャー型のコンプレッションドライバーは後ろに動いた方が自然な動作のようにも感じる。
後ろに下ったダイアフラムは入力信号の次の半波によって前に出てくる。

この前に出てくるときの移動距離(振幅量)は、正相と逆相では違ってくる。
正相になっていれば入力信号の半波分(+側の信号)の振幅だけに前に動く。
逆相だと最初の半波の分だけ後ろに下っていて、前に出るときは次の半波分の振幅がそこに加わり、
このときのダイアフラムの正相よりも前に移動する距離(振幅量)は長くなる。
それだけ前に出てくる空気の量にも違いが出てくる。

正相であればまずダイアフラムが前に出て後ろに下る、この距離が逆相よりも長くなる。
すこしわかりにくい説明になっていると思っているが、
正相でも逆相でも入力信号が同じだからダイアフラムの振幅量に変化はないわけだが、
その向きに違いが出てくる、ということをいいたいわけだ。

もちろん入力信号1波で動く空気の量そのものに、正相でも逆相でも違いはないけれど、
その方向に注意を払ってこまかくみていくと、疎密波の密の部分と疎の部分の空気量に違いが出てくる。
つまりダイアフラムが前に出ることで密の波がうまれ、後ろに下ることで疎の波ができる。

入力信号が0から+側にふれてマイナス側にふれて0にもどるとき、
正相だとまず0から+側のピークまでの密の波が出て、+側のピークから−側のピークまでの疎の波が出て、
−側のピークから0までの密の波が出てくる。
逆相では0から+側のピークまで疎の波が出て、+側のピークから−側のピークまでの密の波が出て、
−側のピークから0までの疎の波が出てくる。

ダイアフラムの向きは正相だと前・後・前、逆相では後・前・後。
疎密波で表せば、正相だと密・疎・密になり、逆相だと疎・密・疎となる。

Date: 9月 29th, 2011
Cate: 4343, JBL, 瀬川冬樹

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その14)

それでは瀬川先生の音のバランスの特長は、どこにあるのかといえば、
それは、基音(ファンダメンタル)と倍音(ハーモニクス)とのバランスにある、と推断する。

これを理解できずに、瀬川先生の出されていた「音」を、周波数スペクトラム的な観点から、や、
使用されていたオーディオ機器への観点から追い求めても、まったく似ても似つかぬ(ただの)音になってしまう。

残念なのは、基音と倍音のバランスの観点(感覚)から、
実際に瀬川先生の「音」を聴かれた人の、瀬川先生の「音」について語られているのが、ない、ということだ。

Date: 9月 29th, 2011
Cate: JBL

62年前も……

ジェームズ・バロー・ランシングは、1949年の今日(9月29日)、命を絶っている。
62年前の今日も、木曜日だった。

Date: 9月 26th, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続々続々余談)

このレベル調整の大事なところのひとつは、ものには順番がある、ということ。
これは、スピーカーシステムのレベル調整だけではなくて、システム全体の調整についても同じことがいえる。

基本的にシステムの調整は、音の入口側(上流側ともいう)、
つまりアナログプレーヤー、CDプレーヤーから手をつけていく。
ここが一通り終ったら、次はアンプにうつり、スピーカーシステムへと手をつける。
長年愛用してきて、ずっと調整をしてきたシステムであれば、どこか一箇所に手をつけることのほうが多くなるが、
システムを構築したばかりのころは、今日はアンプ関係を、明日はスピーカーシステムを、と、
気のむくままにあちこちに手をつけるのではなくて、基本にしたがい音の入口側からきちんとやっていく。

スピーカーシステムのレベルコントロールの調整も同じで、
初めて鳴らすスピーカーシステムで、しかも4343のようにレベルコントロールが3つのあるような場合、
音を鳴らして気になった帯域を気のむくままいじっていても、全体のバランスをうまくとることはむずかしい。
めんどうくさいと感じても、ここでも順番を守って調整していくことで、基本的なバランスを得られる。

この基本的なバランスを得ずに、気の向くままいじっていては、オーディオはいつまでたっても泥沼のままだ。
とにかく基本的なバランスを最初に得ることが大事である。
そして、低音を基本として、という意識をつねにもっていたい。

低音こそ音楽の土台であり、この土台をしっかりと構築していくことが基本である。
土台をいいかげんなままにしておいて、その上に築き上げられる帯域をあれこれいじっても、うまくいくわけがない。
そうやっていても、たまたまうまく鳴ることがあるけれど、ほかのところをいじって、その音がくずれたとき、
もう一度、その音を再現できるかというと、難しいはずだ。
それは土台となる低音域が構築されていないからである。

五味先生は「音の清澄感を左右するものは、低音である」と「五味オーディオ教室」に書かれていた。

低音という土台・基本を出発点としているならば、この言葉を実感できるはずだ。

Date: 9月 26th, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続々続余談)

ミッドバス(2121)のレベル調整がいちおう決まったら、
次はミッドハイのレベルコントロールを上げていきレベル調整を行う。
ここでも、くり返すが、モノーラル音源を使うことを忘れないこと。

ミッドハイのあとはトゥイーター(2405)のレベル調整を行う。
もちろん、ここでもモノーラル音源を使う。

モノーラル音源は、なにもモノーラル録音である必要はない。
コントロールアンプにモードスイッチがついていれば、モノーラルにすればいい。
思い出してほしいのは、コントロールアンプについている機能は、
音を調整していくためにも必要な機能でもある、ということだ。

こうして4343を構成する4つのスピーカーユニットのレベル調整が終ったら、
しばらくの期間は、好きな音楽を聴いて過ごすのがいいと思う。

もちろんモノーラルでのレベル調整を終えた後にステレオで再生して、さらに細かいレベル調を続けて行っていい。
けれど、トゥイーターのレベル調整を終えるのに、ひとりでこの作業を行っているとけっこうな時間をとらえる。
誰か協力してくれる人がいて、4343の脇でこまかくレベルコントロールをいじってくれる人がいれば、
椅子から立ち上らなくても済むだけでなく、それ以上にレベル調整の作業ははかどるものである。

でもひとりだと、そうはいかない。
何度も何度も椅子から立ち上り4343のところへ行きレベルコントロールを動かしては、
また椅子に坐り音を聴き……、をくり返さなければならない。

まとまった時間のとれた時にこの作業を行ったとして、けっこうくたくたになる人もいるはず。
2405のレベル調整を終えた時点で疲労を感じていたら、その日はもうやめたほうがいい。

微調整は残っているとはいえ、ここまできちんと調整を行っていれば、
4343が変なバランスで鳴っている、ということはないからだ。

Date: 9月 22nd, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続々余談)

ここからのレベル調整で気をつけたいのは、レベルコントロールの位置を左右で合わせようとしないこと。
スピーカーユニットにはバラツキがある。
これは以前も書いていることだが、
JBLはスピーカーユニットに関しては、生産上の能率差を±1dBを許容範囲としている。
もっともこれは4343をつくっていた頃の、
JBL proのアプリケーション・エンジニアのゲーリー・マルゴリスの発言で、いまのJBLがそうだということではない。

けれど4343の時代では、最大で2dBの能率差が生じることもあるわけだ。
ステレオサウンドで使っていた4343、4344ではコーン型ユニットに関しては能率差は感じなかったが、
ドライバーユニットに関してははっきりと認められるだけの能率差があった。

だから前回の補足になるが、ウーファーだけを鳴らしたときも、
できれば左右の音圧差がないかどうかチェックしておきたい。
このときプログラムソースはモノーラルのものを使った方がいい。
これは、マルゴリスも、ステレオサウンド 51号掲載の4343研究の中で語っていることだ。

左右一本ずつでの音出しをし、モノーラルでの両チャンネルの音出しで中央に音源が定位するようにすること。
場合によってはアンプのバランスコントロール、
もしくはパワーアンプの入力レベルコントロール(左右独立調整のもの)での調整が必要になるかもしれない。

ミッドバス(2121)のレベルコントロールも同様で、モノーラルの音源を用意しておきたい。
モノーラル1本ずつでレベルを調整し、モノーラル音源の中央の定位が明確になるようにしていく。

ウーファーをネットワーク通さずに鳴らしたときと、
ネットワーク通しミッドバスまで鳴らしたときの再生帯域はそう違わない。
けれど、実際にこのふたつの音を比較すると、大きな違いがある。
片方はネットワークを経由していないウーファーだけの音、
もう片方は3つのフィルター(ウーファーのハイカット、ミッドバスのローカットとハイカット)を通って、
しかも2つのスピーカーユニットが鳴っているわけだから、違いがあって当然なのだが、
このときの音の違いは記憶しておきたい。

Date: 9月 21st, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続余談)

4343のウーファー2231Aが弾むような感じでうまく鳴ってくれるところ、
音楽を聴いて手応えを感じられるような音で鳴ってくれるところが見つかったら、
ここで床からの距離を試してみる。

最初から1cm刻みで高さを変えていくという人もいるだろうが、
最初は5cm単位、10cm単位ぐらいでいい。
それで床に直置き、5cmあげた状態、10cmあげた状態、15cmあげた状態の音を聴いて、
たとえば床直置きと5cmあげた状態、どちらか迷うのであれば、その中間を試してみる。
このとき4343をもちあげる台は、まず木のブロックがいい。
もちろんほかの材質のブロックを使ってもかまわないが、
最初は同じ材質で高さの違うブロックを用意しやすいということで、木をすすめる。

この時点で、ウーファーを固定しているネジの締付け具合による音の変化も確認しておきたい。
しっかり締めた状態、すこしゆるめた状態、あきらかにゆるめた状態の音を聴いて、
音楽のメロディが明瞭に聴こえるところにしておく。
締めつけすぎはよくないが、しっかり締まっていなければ、音楽のメロディは明瞭に聴こえてこないはずだ。

ここまでやって、これから上3つのユニットのレベル調整にとりかかる。
ここからはバイアンプ駆動のロータリスイッチを通常のポジションに戻す。
ミッドバス(2121)、ミッドハイ(2420)、トゥイーター(2405)のレベルコントロールは完全に絞っておく。
そしてミッドバスのレベルコントロールをあげていく。ウーファーとのバランスをはかりながら調整していく。
ミッドバスのレベルをあるところまで調整できたら、ここでもミッドバスを固定しているネジ締付け具合を調整する。

だからといって、ここでものすごいこまかい微調整まで行わなくてもいい。
まだチューニングの途中なのだから。

Date: 9月 21st, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・余談)

低音域こそが土台であり基本であり、そこに、その上の帯域を築いていく、ということは、
なにも既存のスピーカーシステムにスーパーウーファーを加えて調整するときだけでなく、
既製品のスピーカーシステムについても同じことだ。

今年の2月から毎月第一水曜日に四谷三丁目の喫茶茶会記で行っている公開対談の前々回で、
JBLの4343をどう鳴らすのかをテーマにしたときにも話したことだが、
4343の調整方法として、こういうやり方もある。

4343はバイアンプ駆動が行えるようになっている。
リアバッフルの入力端子の近くに、
マイナスドライバーで切り替えられるようになっているロータリースイッチがある。
これをまずバイアンプ駆動のポジションにする。
そしてパワーアンプからのスピーカーケーブルは下側の端子(つまりウーファー用の端子)に接ぐ。
ウーファーの2231A(もしくは2231H)をフルレンジとして鳴らすことになる。

ボイスコイルボビンとコーン紙との接合部分に、
f0を下げるためのマスコントロールリングが装着されている2231Aだから、
2220やD130のウーファー版の130Aのように、
またはアルテックの515のようにある程度まで中高域まで伸びているわけではないが、
高域は完全に不足しているものの、音楽のメロディは聴きとれる。
この状態で、4343の設置場所をあれこれさぐる。
つまりウーファー(低音域)ができるだけよくなるところをさぐりだすわけだ。

スピーカー背面の壁からの距離、左右の壁からの距離をあれこれ試す。
このときは、床に直置きでもかまわない、というか、直置きのままのほうが動かしやすく、
最適もしくは好適な場所をさぐりやすい。

床からどのぐらい離すかは、最初にやらなくてもいい。
もちろんブックシェルフ型のスピーカーシステムだったら別だが、
4343は4面仕上げしてあるとはいうもののフロアー型スピーカーシステムであるからだ。

Date: 8月 13th, 2011
Cate: 40万の法則, D130, JBL, 岩崎千明

40万の法則が導くスピーカーの在り方(D130と岩崎千明氏・その11)

空気をビリビリと振るわせる。
ときには空気そのものをビリつかせる。

「オーディオ彷徨」とHIGH-TECHNIC SERIES 4を読んだ後、
私の裡にできあがったD130像が、そうだ。

なぜD130には、そんなことが可能だったのか。
空気をビリつかせ、コーヒーカップのスプーンが音を立てるのか。
正確なところはよくわからない。
ただ感覚的にいえば、D130から出てくる、というよりも打ち出される、といったほうがより的確な、
そういう音の出方、つまり一瞬一瞬に放出されるエネルギーの鋭さが、そうさせるのかもしれない。

D130の周波数特性は広くない。むしろ狭いユニットといえる。
D130よりも広帯域のフルレンジユニットは、他にある。
エネルギー量を周波数軸、時間軸それぞれに見た場合、D130同等、もしくはそれ以上もユニットもある。
だが、ただ一音、ただ一瞬の音、それに附随するエネルギーに対して、
D130がもっとも忠実なユニットなのかもしれない。
だからこそ、なのだと思っている。

そしてD130がそういうユニットだったからこそ、岩崎先生は惚れ込まれた。

スイングジャーナル1970年2月号のサンスイの広告の中で、こう書かれている。
     *
アドリブを重視するジャズにおいては、一瞬一瞬の情報量という点で、ジャズほど情報量の多いものはない。一瞬の波形そのものが音楽性を意味し、その一瞬をくまなく再現することこそが、ジャズの再生の決め手となってくる。
     *
JBL・D130の本質を誰よりも深く捉え惚れ込んでいた岩崎先生だからこその表現だと思う。
こんな表現は、ジャズを他のスピーカーで聴いていたのでは出てこないのではなかろうか。
D130でジャズで聴かれていたからこその表現であり、
この表現そのものが、D130そのものといえる。

Date: 8月 13th, 2011
Cate: 40万の法則, D130, JBL, 岩崎千明

40万の法則が導くスピーカーの在り方(D130と岩崎千明氏・その10)

私は、ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 4を読んだあと、
そう経たないうちに「オーディオ彷徨」を読んだことで、D130を誤解することなく受けとることができた。
もちろん、このときD130の音は聴いたことがなかったし、実物を見たこともなかった。

HIGH-TECHNIC SERIES 4の記事をだけを読んで(素直に読めばD130の凄さは伝わってくるけれども)、
一緒に掲載されている実測データを見て、D130の設計の古さを指摘して、
コーヒーカップのスプーンが音を立てたのは、歪の多さからだろう、と安易な判断を下す人がいておかしくない。

昨日書いたこの項の(その9)に坂野さんがコメントをくださった。
そこに「現在では欠陥品と呼ぶ人がいておかしくありません」とある。
たしかにそうだと思う。現在に限らず、HIGH-TECHNIC SERIES 4が出たころでも、
そう思う人がいてもおかしくない。

D130は優秀なスピーカーユニットではない、欠点も多々あるけれども、
欠陥スピーカーでは、断じてない。
むしろ私はいま現行製品のスピーカーシステムの中にこそ、欠陥スピーカーが隠れている、と感じている。
このことについて別項でふれているので、ここではこれ以上くわしくは書かないが、
第2次、第3次高調波歪率の多さにしても、
その測定条件をわかっていれば、必ずしも多いわけではないことは理解できるはずだ。

HIGH-TECHNIC SERIES 4での歪率はどのスピーカーユニットに対しても入力1Wを加えて測定している。
つまり測定対象スピーカーの音圧をすべて揃えて測定しているわけではない。
同じJBLのLE8Tも掲載されている。
LE8Tの歪率はパッと見ると、圧倒的にD130よりも優秀で低い。
けれどD130の出力音圧レベルは103dB/W/m、LE8Tは89dB/W/mしかない。14dBもの差がある。
いうまでもなくLE8TでD130の1W入力時と同じ音圧まであげれば、それだけ歪率は増える。
それがどの程度増えるかは設計にもよるため一概にいえないけれど、
単純にふたつのグラフを見較べて、
こっちのほうが歪率が低い、あっちは多すぎる、といえるものではないということだ。

D130と同じ音圧の高さを誇る604-8Gの歪率も、だからグラフ上では多くなっている。

Date: 8月 12th, 2011
Cate: 40万の法則, D130, JBL, 岩崎千明
1 msg

40万の法則が導くスピーカーの在り方(D130と岩崎千明氏・その9)

D130は、凄まじいユニットだと、ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 4を読んだときに、そう思った。
そしてHIGH-TECHNIC SERIES 4のあとに、私は「オーディオ彷徨」を読んだ。
「オーディオ彷徨」1977年暮に第一版が出ているが、私が手にして読んだのは翌年春以降に出た第二版だった。
「オーディオ彷徨」を読み進んでいくうちに、D130の印象はますます強くはっきりとしたものになってきた。

岩崎先生の文章を読みながら、こういうユニットだからこそ、コーヒーカップのスプーンが音が立てるのか、
とすっかり納得していた。

D130よりも出来のいい、優秀なスピーカーユニットはいくつもある。
けれど「凄まじい」と呼べるスピーカーユニットはD130以外にあるだろうか。

おそらくユニット単体としてだけみたとき、D130とD101では、後者のほうが優秀だろうと思う。
けれど、音を聴いていないから、515や604-8Gを聴いた印象からの想像でしかないが、
D101には、D130の凄まじさは微塵もなかったのではないだろうか。
どうしてもそんな気がしてしまう。

D130を生み出すにあたって、
ランシングはありとあらゆることをアルテック時代にやってきたことと正反対のことをやったうえで、
それは、しかし理論的に正しいことというよりも、ランシングの意地の結晶といえるはずだ。

素直な音の印象の515(それにD101)と正反対のことをやっている。
515は、アルテック時代にランシングがいい音を求めて、
優秀なユニットをつくりるためにやってきたことの正反対のことをあえてやるということ──、
このことがもつ意味、そして結果を考えれば、
D130は贔屓目に見ても、優秀なスピーカーユニットとは呼びにくい、どころか呼べない。

だからD130は人を選ぶし、その凄まじさゆえ強烈に人を惹きつける。

Date: 8月 12th, 2011
Cate: 40万の法則, D130, JBL, 岩崎千明

40万の法則が導くスピーカーの在り方(D130と岩崎千明氏・その8)

D101では、コーヒーカップのスプーンは、音を立てただろうか。
おそらく立てない、と思う。

アルテックの604シリーズの原形はランシングの設計だし、
604のウーファーは、やはりランシング設計の515相当ともいわれている。
その604ではスプーンが音を立てなかったということは、
同じく515をベースにフルレンジ化したD101も、スプーンは音を立てない、とみている。

以前、山中先生が、
ウェスターン・エレクトリックの594を中心としたシステムのウーファーに使われていた
アルテックの515を探したことがあった。
山中先生からHiVi編集長のOさんのところへ話が来て、さらに私のところにOさんから指示があったわけだ。

いまでこそ初期の515といってもわりとすぐに話が通じるようになっているが、
当時はこの時代のスピーカーユニットを取り扱っている販売店に問い合わせても、
まず515と515Bの違いについて説明しなければならなかった。

それこそステレオサウンドに広告をだしている販売店に片っ端から電話をかけた。
そしてようやく515と515Bの違いについて説明しなくても、
515がどういうユニットなのかわかっている販売店にたどりつけた。
すぐ入荷できる、ということでさっそく編集部あてに送ってもらった。

届いた515は、私にとってはじめてみる515でもあったわけで、箱から取り出したその515は、
数十年前に製造されたものと思えないほど状態のいいモノだった。
それでHiViのOさんとふたりで、とにかくどんな音が出るんだろうということで、
トランジスターラジオのイヤフォン端子に515をつないだ。

このとき515から鳴ってきた音は、実に澄んでいた。
大型ウーファーからでる音ではなく、大型フルレンジから素直に音が細やかに出てくる感じで、
正直、515って、こんなにいいユニット(ウーファーではなくて)と思ったほどだった。

もしD130で同じことをしたら、音が出た瞬間に、
たとえ小音量ではあってもそのエネルギー感に驚くのかもしれない。