Posts Tagged オーディオ・システムのデザインの中心

Date: 8月 21st, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その3)

1967年、オーディオ機器へ物品税がかかるようになり、
それまでは部品扱いだったアンプやスピーカー、プレーヤーが、完成品とみなされるようになった。

車は車一台で車としての機能を持っている。
けれどオーディオ機器の場合、アンプだけを買ってきても、それだけでは音は出てこない。
スピーカーシステムにしてもプレーヤーシステムにしても同じで、
レコードを聴くには最低でもプレーヤーシステムとアンプ、
それにスピーカーシステム、もしくはヘッドフォンを買ってこなければならない。

その意味では、確かにオーディオ機器は「部品」という見方ができる。
その「部品」を買ってきて、自分のためのシステムを構築する。

システムとは「個々の要素が有機的に組み合わされた、まとまりをもつ全体。体系」と辞書にはある。
まとまり・まとまるとは「ばらばらであったものが集まってひとつになる。また統一のある集まりとなる」ことだ。

ばらばらであったものが集まるには、中心となるもの(モノ)があってこそ、成り立つのではないのだろうか。
中心がなければ、ばらばらであったものは、いつまでたってもばらばらである。

オーディオというシステムにおいて、中心となるのはスピーカーシステムということになる。
まずスピーカーありきで、組合せを考えることは始まる。

ずっと以前は、多くのオーディオ雑誌にあった相談コーナーのページで、
「このアンプに合うスピーカーはなんですか」と読者の質問が少なからずあった。
いまでもインターネットに、昔と同じようにあるようだが、
いまも昔も、くり返すが、まずスピーカーありき、である。

Date: 8月 21st, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その2)

たとえばラックスのコントロールアンプCL32は128000円、キットのA3032は88000円、
CL30は169000円、キットのA3400は108000円、
パワーアンプのMB3045は128000円(一台)、キットのA3000は79000円(一台)だった。

物品税の分だけ安いともいえるし、
そのメーカーでの組み立てにかかるコストも省けるから,ともいえるわけだが、
キットにはキットならではの苦労が、メーカーにはあったはずだ。

キットを購入して組み立てる人の技術が、どの程度なのかはばらばらのはず。
自分で回路設計もできてコンストラクションまで考える人もいるば、
ハンダゴテを握るのも初めて、とにかく安く買えるから、という人までいたと思う。

当然ハンダ付けの技術もワイヤリングの技術もまったく異る人たち向けにキットは売られている。
技術のある人ならば問題なく組み立て、調整し、完成品とまったく変わらぬモノを安く手にできる人もいる反面、
まともに組み立てられずメーカーに送る、という人もいた。

それに対してもメーカーとしてはアフターサービスとして、きちんと対応していた、と思う。
このコストは、完成品が故障で戻ってくるのよりも、ずっとかかっていたのではなかろうか。

キットの販売は大変だったはずだ。
それをラックスは長年やってくれていた。
私自身はラックスキットを購入したことはないけれど、
キットという存在はオーディオの勉強の教材としても存在していた。

物品税は1989年の消費税導入によってなくなった。
そうなると製品でもキットでも、消費税率は同じになる。

Date: 8月 21st, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その1)

1970年代、1980年代は各メーカーからキットが発売されていた。
有名なところではラックスキットがあった。

キットといえば初心者向きのモノと受けとられがちだが、
ラックスキットは充実していた。

たとえばラックスの管球式パワーアンプMB3045のキットはA3000、
MQ60のキットはKMQ60、
その他にもキットのみのモデルもあった。

コントロールアンプもCL32のキットがA3032、
CL30のキットがA3400として出ていた。

アメリカではダイナコの真空管アンプのキットも有名だった。

その他にもキットはいくつもあった。
ターンテーブルのキットもあり、アンプ、スピーカー、
それにデヴァイディングネットワーク(チャンネルデヴァイダー)もあった。
システムのほとんどをキットで揃えることもできた。

キットがこれだけ充実していたのには、物品税という理由がある。

昭和42年(1967年)、それまで部品扱いで非課税だったオーディオ機器に物品税がかけられることになった。
物品税は15%が基本で、いきなり15%もの課税になると、一挙にオーディオ機器の価格は高くなる。
そのため5%ずつ上げる、という猶予が与えられた。

そうなってもキットは、部品扱いだったため15%の物品税は関係ない。
だからキット販売は、価格をかなり抑えることができた。