日本のオーディオ、日本の音(その24)
1970年代、菅野先生の録音で知られるオーディオラボから「SIDE by SIDE」というレコードが登場した。
シリーズ化された「SIDE by SIDE」は4枚出ていたと記憶している。
「SIDE by SIDE」はシリーズを通して、
A面はベーゼンドルファー、B面はスタインウェイによる演奏を録音している。
だから「SIDE by SIDE」のレコードを再生するにあたっては、
A面とB面とではピアノの音色の違いがどれだけ明瞭に出てくるのかが、大きなポイントでもある。
録音もベーゼンドルファーとスタインウェイという、ふたつのピアノの特質をよくとらえているからこそ、
その再生にあたっては、A面とB面とで、同じピアノが鳴っているように聴こえてしまっては、
再生装置による色づけが支配的ともいえなくはない。
自分にとって心地よい音が出てくれればそれでいい、という人もいる。
その気持はわかる。
オーディオが醸し出す音色には、うまくいくと実に心地よいものとなる。
ときに、その心地よい音色におぼれていたくなる(つつまれていたくなる)ことは、私にもあった。
でも、聴きたいのは最終的には音楽である。
音楽を聴く以上は、音楽を構成する音色に対して忠実でありたい。
完璧な状態で鳴らすことは、いまのところ無理なのはわかっていても、
それでもピアノはピアノらしく、ヴァイオリンはヴァイオリンらしく鳴った上で、
さらには同じピアノでもベーゼンドルファーはベーゼンドルファーらしく、
スタインウェイはスタインウェイらしく鳴ってくれなければ、私はこまる。