数字からの解放(その3)
マーク・レヴィンソンは、とにもかくにもマークレビンソン・ブランドで出すアンプのスペックに関しては、
最少限の項目(入力インピーダンス、出力、消費電力など)のみの発表にしてしまった。
だからといって測定を行なっていないわけではない。
このころのマークレビンソンのアンプはモジュール形式を採用していたから、
おそらくモジュールができ上がった時点で、一個ずつ測定しチェックしていただろうし、
さらにLNP2、JC2といったアンプとして完成させた時点でも、
不備や異状がないかを測定してチェックしていたであろうことは間違いないはず。
それにアンプの開発においても測定はしていた、と思う。
けれど、それらの測定データ(歪率、S/N比など)はいっさい公表しなくなった。
マーク・レヴィンソンが次に興したチェロにおいても、そういえば使用上必要な項目のみだった。
これは、思い切ったことだと思う。
LNP2やJC2の入出力端子を、一般的でもあり標準的なRCAタイプから、
CAMAC規格のLEMO製のコネクターに全面的に変更したときも、やはり思い切ったことであった。
RCAコネクターをやめ、それまでどこのメーカーも採用したことのないコネクターを採用するということは、
他のメーカーのオーディオ機器といっしょに使う場合には、
コネクターの変換プラグが必要となる。
それにマークレビンソンが採用したCAMAC規格のコネクターは線径の太いケーブルは使えない。
頼りないと感じるくらいの細いシールド線しか使えなかった。
いくつもの制約がありながらも、
マーク・レヴィンソンがCAMAC規格のコネクターの採用に踏み切ったのは、
コネクターにおける信頼性の圧倒的な向上であり、音質的なメリットであったはず。
この時代のマーク・レヴィンソンという男は、そういう人物であった。
(Mark Levinsonのカタカナ表記については、こちらを参照のこと)