ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その11)
スピーカー端子が、Exclusive M5と同等のつくりになってくれれば、
どんなスピーカーケーブルであろうと、当時はしっかりと接続できたわけだが、
そんなことを期待していては、試聴という仕事はできないわけで、
なんらかのスピーカーケーブルの末端処理が必要となる。
私がステレオサウンドにいたころ、スピーカーケーブルはトーレンスのケーブルが標準となった。
これはマークレビンソンのHF10Cとほぼ同等の内容のケーブルで、
被覆の色・硬さに違いがあるくらいである。だから芯線が細く、その数が多く、太いケーブルである。
このトーレンスのケーブルが、
当時、いろいろあったスピーカーケーブルのなかでもっとも音質的に優れていた、というわけではない。
比較的癖の少ないケーブルで、どのようなパワーアンプに接続しても、
アンプの動作が不安定になるようなこともない。
そういう観点から自然と決っていった、といえるものである。
1980年代もなかばにはいると、アクセサリーとして末端処理用の製品がいくつか登場し始めた。
それらのいくつかを試したことは、もちろんある。
けれどどれも試聴室で使うには満足できるものがなく、結局、いくつか試行錯誤した結果、
ある方式に落ち着いた。
私が考えついた、この方式が完璧な末端処理とはいわないものの、
それでも音質的な変化は少なく、ほぼどんなスピーカー端子であっても確実に接続できた。
これは決して自己満足ではなく、
実はあるメーカーの担当者から、スピーカーケーブルの末端処理をどうしているのか、と訊かれたこともある。
井上先生が、その担当者に「ステレオサウンドの宮﨑にきけ」といわれたから、であった。