Date: 11月 19th, 2012
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹
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瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その3)

マイケルソン&オースチンのTVA1が現代のMC275と、当時いわれたのは、
なにもKT88のプッシュプルで出力がほぼ同じということだけでなく、
シャーシーがどちらもクロームメッキ処理されているということもあった。

KT88とクロームメッキ、ということでいえば、1983年に登場したフランスのジャディスのJA80もまた、
KT88にクロームメッキ・シャーシーの組合せだった。
JA80は、けれどAクラス動作(MC275、TVA1はABクラス)で80Wの出力を得るために、
KT88を4本使用したパラレルプッシュプル。

いま、これら3機種を集めて聴き較べをしてみたら、どういう結果になるんだろうか、と関心がある。
どれも、個性の強い(というより濃い)音を特色としている。
そういう音をベースにしていても、意外にも一色に塗ってしまう音とは違う。

しなやかさをきちんと持っている。
コントロールアンプを替えれば、カートリッジやCDプレーヤーを替えたりすれば、
その音色の違いを、それぞれのアンプ固有の音色の中に反映させる、という意味でのフレキシビリティの高さがある。

意外に思われるかもしれないけれど、MC275もフレキシビリティの高いアンプである。
これは以前書いていることだが、ステレオサウンドの試聴室で、MC275を鳴らしたことがある。

鳴らしたスピーカーシステムはBOSEの901に、アポジーのCaliper Signature、
コントロールアンプはあえて使わずにCDプレーヤーを直接接続。
音量調整はMC275の入力レベルコントロールで行った。

901とCaliper Signatureは、ずいぶんと異る面をいくつも持つスピーカーシステムで、
およそ共通するところはないように見える、このふたつのスピーカーをMC275を実にうまく鳴らしてくれた。

Caliper Signatureはインピーダンスが低いため、
トランジスターアンプでは大型の電源トランスと大容量のコンデンサーによるしっかりと余裕のある電源、
それに低インピーダンス負荷においても十分な電流供給能力をもつ出力段、
そういったことが要求されるわけで、必然的に大型パワーアンプと組み合わされることが多かった。

そういったアンプからみれば、MC275の出力は少ないし、規模も小さい。
リボン型の低インピーダンスのスピーカーシステムを鳴らしきるアンプとは思いにくい。

その印象はそう間違ってはいない。
Caliper Signatureに合うパワーアンプが鳴らしきる、という印象の音なのに対し、
MC275での音には、鳴らしきっている、という印象はない。
けれど、うまく鳴らしてくれる。
鳴らしきるパワーアンプでは聴けない表情をCaliper Signatureから抽き出してくれた。

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