「言葉」にとらわれて(その11)
クリプッシュホーンの、こういう構造はデメリットとして考えていた。
クリプシュホーンを採用するかぎり、ウーファーはどんなユニットをもってこようと、
それほど高い周波数までの再生は無理である。
ウーファーに再生能力があっても、折り曲げられたホーン内を通ってくるあいだに、
高い周波数は減衰してしまう。
だからエレクトロボイスのパトリシアンではウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数は200Hzと、
あの時代のスピーカーシステムとしては、異例といえるほど低い。
ヴァイタヴォックスのCN191は2ウェイということもあって、
クロスオーバー周波数は500Hzと少し高い値になっている。
そのため、CN191は340Hz付近で10dB程度のディップを生じている。
これはクリプシュホーンを採用している以上避けられないこと。
誰が考えても明白なことで、
クリプシュホーン採用のスピーカーシステムをつくっていたメーカーの人間は、
当然、このデメリットはわかった上でなお採用しているのはなぜだろう? と考えたことがあった。
もうずっと前のことだ。
オーディオに興味を持ちはじめたころ、
クリプシュホーンがどういうものかを知ったときのことで、
まだ10代半ばだった私は、低音までのオールホーンシステムをつくるために、
ある意味、止むを得ずの選択だったのだろう、と結論づけてしまった。
それを、いまは訂正しなければならないかも、と思っている。
そう思わせたのは、この項の(その9)に書いたBALMUDAの扇風機である。