「異相の木」(その10)
JBLが、もしカートリッジをつくっていたら、どんなものだっただろうか。
JBLのスピーカーシステムのラインナップと共通するカートリッジのラインナップを用意していた、
と仮定して、あれこれ想像してみる。
JBLのスピーカーシステムには、家庭用スピーカーシステムとしてハークネス、ハーツフィールド、
オリンパス、パラゴンといったフロアー型があり、
アクエリアスという、あの時代としては実験的な性格の強いスピーカーシステムもつくっている。
そして4300シリーズ、4400シリーズに代表されるプロ用スピーカーシステムも手がけている。
基本的にほぼ同じ設計のスピーカーユニットを組み合わせながらも、
家庭用とプロ用とではスピーカーシステムとしてのデザインが大きく異る。
JBL好きの人にとって、
家庭用に惚れ込む人もいるし、プロ用に惚れ込む人、
両方とも好きな人もいる。
家庭用もプロ用もどちらも明確にJBLのスピーカーシステムでありながらも、
家庭用とプロ用を比較すると、そこにははっきりとした違いを感じるのは、
カートリッジの世界でいえば、
オルトフォンが近い存在のようにも思える。
オルトフォンには伝統的なSPUがあり、
SPUがロングセラーを続けながらも、SPUとは違うカートリッジも積極的に開発した。
私はすべてのオルトフォンのカートリッジを聴いているわけではないが、
ステレオサウンドの古いバックナンバーやステレオサウンドで働いていたころに聞いた話からもわかるように、
オルトフォンもすべてのカートリッジが成功してきたわけではない。
オルトフォンにとって、SPUと並ぶラインナップが生れるきっかけとなったのは、
1976年のMC20の誕生だと思う。
MC20に続きMC30が登場、そのMC30の技術がMC20に活かされMC20MKIIとなり、
ローコストのMC10へとラインナップは充実してきた。
このMCシリーズは、オルトフォンの新世代のカートリッジのはじまり、といえる。