オリジナルとは(続×六・チャートウェルのLS3/5A)
ロジャースのPM510とPM510SIIの違いは、
このスピーカーシステムに関心のない人にとっては、さほど大きな違いではないのかもしれない。
そういう人の多くは、きっとSIIのほうがいい、特に低音がまともになっていると評価になるんだろうが、
PM510のというスピーカーシステムの魅力に関しては、
このスピーカーシステムに惚れ込んでいる人とそうでない人とのあいだには大きな違いがある。
ロジャースはPM510の発売1年後にStudio Oneという、
3ウェイのブックシェルフ型を出している。
ベクストレン振動板の20cm口径のコーン型ウーファー、
セレッションのHF1300トゥイーターにKEFのスーパートゥイーターからなる、このStudio Oneは、
ユニット構成もエンクロージュアのサイズもバスレフポートの位置も、
スペンドールのBCIIとそっくりのスピーカーシステムであり、
このことはStudio OneはBBCモニターのLS3/6のロジャース版ともいえるものである。
ウーファーはBCIIと外観的によく似ているものの、ボイスコイルボビンにカプトンを採用することで、
耐入力を一気に改善している。
パワーに弱いといわれるBCIIなだけに、Studio Oneは後から登場しただけに、
よく似てはいても現代的なスピーカーシステムとしての基本性能をもつようになっていた。
BCIIも好きだった私は、Studio Oneには期待していた。
BCIIの良さそのままで、ぐんと良くなっている(そんなことはありえないのだが)、と期待していた、のだ。
どこで聴いたのか、いつ聴いたのか、そんなことをすでに忘れてしまったほど、
Studio Oneの音にはがっかりした。
BCIIに感じていた魅力が、Studio Oneにはまったくといっていいほど感じられない。
ユニット構成はほぼ同じだし、こんなに似ているのになぜ? と思ったのだけははっきりと憶えている。
そのときの試聴条件があまりよくなくて、そういう試聴結果になったのだろう、と
これを読まれた方はそう思われるかもしれない。
おまえも、少し間に「聴くことの怖さ」ということで書いているだろう、と。
けれどStudio Oneはステレオサウンドの試聴室でも、その後聴く機会があった。
だから、私にとってStudio OneはBCII、PM510のように魅力的なスピーカーではなかった。