オリジナルとは(続々続々・チャートウェルのLS3/5A)
PM510SIIの外観は、PM510とほとんど見分けがつかない。
トゥイーターのパンチングメタルがメッシュに変更されたことぐらいである。
もっとも裏側にまわれば入力端子がバイアンプ対応になったため、
そのための変更がなされているからすぐにPM510SIIと判断はつく。
PM510をバイアンプ駆動すれば、LS5/8とほほ同じにできる。
それが結果的に望ましい音が得られるかどうかは別として、
PM510のクォリティをさらに追求する手段が、ロジャースによって提供された、ともいえる、
SIIへの改良であった。
音を聴くまで、実を言うと、PM510の購入はもうすこし待てばよかったかも……、と思っていた。
でも、ステレオサウンドの試聴室で鳴ったPM510SIIの音を聴いて安心した。
PM510を買っておいて、良かった、とも思っていた。
PM510SIIはエンクロージュアの材質も変更されている。
そのこともあって、PM510の低音に不満をもっていた人にとっては、
ずいぶんとすっきりした低音になった、ということになるのだろうが、
PM510に惚れ込んでいた私の耳には、PM510に感じていた良さの大半が失われた、と感じた。
これは市場の要求に応えた改良ということになるのかもしれない。
実際に、PM510SIIの方がいい、という人がこのときも何人もいたのだから、そういうことになるのだろう。
でも、瀬川先生が健在だったら……、と思った。
PM510に惚れ込まれていた瀬川先生ならば、PM510SIIの音になんといわれるか。
PM510SIIを聴いて、もうひとつ思っていた。
私がロジャースのスピーカーの中で惚れ込んでいたのはPM510とLS3/5Aだけである。
このふたつのスピーカーシステムは、ロジャースが製造していることは間違いないけれど、
ロジャースが開発した、とはいえないスピーカーシステムであることを、思っていた。