私的イコライザー考(妄想篇・その1)
テクニクスが1983年ごろに1/3オクターヴのグラフィックイコライザーSH8065と、
その上級機のSH8075を、それぞれ79800円、100000円で発表した時には、
オーディオ界のちょっとしたニュースになるくらいの、衝撃的な価格設定だった。
それまで1/3オクターヴのグラフィックイコライザーといえばプロ用機器の世界のものであり、
価格も試してみたいから、ちょっと手を出すには充分高価なものだった。
その1/3オクターヴのグラフィックイコライザーを、100000円で出してくれた、と言いたくなる。
もっともいまではもっと安い1/3オクターヴのグラフィックイコライザーがいくつか存在している状況であるから、
10万円のグラフィックイコライザーの登場の衝撃は、
この時を知らない世代にとっては実感として理解しにくいことかもしれない。
SH8075が登場してしばらくたったころに、ばかげたことを考えていた。
あまりにも馬鹿げていたので、当時だれにも話したことはない。
本人もすっかり忘れていた。
それを、別のことを考えていた時に思い出した。
どんなばかげたことかというと、
グラフィックイコライザーの出力を1/3オクターヴで出力するというものだ。
SH8065は16Hzから25kHzまでを33分割している。
だからSH8065のフロントパネルには片チャンネルあたり33個のスライドボリュウムが並ぶ。
この33分割の中心周波数は16Hz、20Hz、25Hz、31.5Hz、40Hz、50Hz、63Hz、80Hz、100Hz、125Hz、
160Hz、200Hz、250Hz、315Hz、400Hz、500Hz、630Hz、800Hz、1kHz、1.25kHz、1.6kHz、2kHz、
2.5kHz、3.15kHz、4kHz、5kHz、6.3kHz、8kHz、10kHz、12.5kHz、16kHz、20kHz、25kHzとなっている。
これらの周波数を中心周波数とする1/3オクターヴの信号を出力する。
つまり片チャンネルあたり33個のライン出力がリアパネルに並ぶことになる。
パワーアンプもその数分用意する。
ということは、もちろんスピーカーユニットも片チャンネルあたり33個並べる、
という妄想をしていたのが、いまから約30年前の私だった。