Date: 6月 25th, 2012
Cate: High Fidelity
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ハイ・フィデリティ再考(続×十四・原音→げんおん→減音)

ネルソン・パスがスレッショルドを創立したときからのパートナーでありデザイナーでもあるルネ・ベズネも、
同時期パスと同じマーチンローガンのコンデンサー型スピーカーを使っている。

その後パスとベズネのスピーカー遍歴がどうなっていったのか、その詳細は知らない。
パス・ラボラトリーズからは数年前に4ウェイのアンプ内蔵型のスピーカーシステム”Rushmore”が登場した。

15インチ口径のウーファー、10インチ口径のミッドバス、6インチ口径のミッドハイ(ここまではすべてコーン型)、
スーパートゥイーターのみリボン型を採用したラッシュモアは、
80Wのアンプを1台、20W出力のアンプを3五台搭載したマルチアンプ駆動でもある。
これら4台のアンプの回路は、低域を受け持つ80WのアンプのみXAシリーズと同じ構成で、
3台の20WのアンプはALEPHシリーズとなっている。

ラッシュモアの資料には各ユニットの出力音圧レベルが記載されている。
ウーファーが97dB/W/m、ミッドバスとミッドハイ、スーパートゥイーターは98dB/W/mと、
ユニットそのものの能率がかなり高いものが選ばれている。
これらのユニットをラッシュモアでは-6dB/oct.というゆるやかなカーヴでクロスさせている。
(スーパートゥイーターのローカットのみ12dB)

ラッシュモアが登場したとき、紹介記事の多くにはネルソン・パスがラッシュモアを開発するきっかけにもなり、
パス自身が愛用していたスピーカーとしてアルテックのA5の名があげられていた。

A5について改めてここで書く必要もないだろう。
古典的な高能率の、極端に広くない劇場であれば、
このスピーカーだけで十分通用するだけの朗々とした音を楽しませてくれるスピーカーシステムである。

1970年代、日本のオーディオマニアはこのA5や弟分にあたるA7を家庭に持ち込む人は少なくなかった。
むしろジャズの熱心な聴き手のあいだでは、それが当然のことように受け止められていた。

A5はもちろん、A7も日本の住宅環境では大きすぎるスピーカーシステムであり、
A5、A7にとって日本の住宅環境は極端に狭すぎる音響空間でもある。
それにA5、A7の仕上げは家庭内という近距離で眺めるスピーカーシステムでもない。
あくまでも業務用の仕上げである。
それでもA5、A7を導入する人はいた、少なからぬ人が、あの時代にはいた。

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