ハイ・フィデリティ再考(続々続・原音→げんおん→減音)
音を調整していく上で行っている行為──、
たとえばボリュウムの上げ下げ、スピーカーシステムのレベルコントロールの調整、
グラフィックイコライザーやパラメトリックイコライザー、トーンコントロールを使っているのであれば、
各種ツマミの調整、これらはすべて音を減らす行為である。
と書くと、スピーカーシステムレベルコントロールは、たいてい真ん中の位置に0ポジション(フラット)があり、
レベルを上げることもできる、と。
グラフィックイコライザー、パラメトリックイコライザーにしてもそうだ、と。
ボリュウムも同じだろう、と。
でも、これらはすべて減衰量を調整しているだけである。
つまりそのオーディオのシステムでだせる最大のエネルギーを減らすことで、バランスを整えている。
スピーカーシステムのレベルコントロールで、たとえばトゥイーターのレベルを0ポジションから右回りにまわす。
トゥイーターのレベルは当然高くなる。
これはトゥイーターのレベルが相対的に増えているだけであって、
絶対的にみればそのトゥイーターが出し得る最大レベルから
減衰量を0ポジションの位置にあるときよりも少なくしているだけことである。
0ポジションにおいて減衰量がたとえば6dBだとしたら、
レベルコントロールを少しあげたことによって減衰量を6dBよりも少ない、4dBとか3dBにしているだけである。
レベルコントロール(アッテネーター)によって減衰させていることにはかわりはない。
アッテネーターは減衰器である。
グラフィックイコライザー、パラメトリックイコライザーでのツマミの操作もそうだ。
0ポジション(フラット)の位置からツマミをあげれば、その帯域での出力レベルは増す。
でもそれはグラフィックイコライザー、パラメトリックイコライザーに上昇分だけの余剰ゲインをもたせており、
それよりも減衰量が多いか少ないかだけのことである。
つまりボリュウムを最大にして、トーンコントロールやイコライザー類のツマミをすべて最大限にあげて、
スピーカーシステムのレベルコントロールもすべて最大にする。
この状態でまともな音が聴けることは、まずないけれど、
この状態こそが、そのシステムが出し得る最大のエネルギーである。
これを整えるためにトゥイーターのレベルを下げたり、スコーカーのレベルも下げる。
グラフィックイコライザー、パラメトリックイコライザー、
トーンコントロールのツマミも最初は真ん中にもってくる。
そして肝心のボリュウムも下げるわけだ。
レベルを上下するということは、減衰量を可変していること。
レベルを上げたつもりでも、それは減衰量を以前の状態よりも減らした、ということである。
それを「上げた」と、いわば錯覚している、ともいえる。