オーディオの「介在」こそ(その7)
家庭で好きなときに好きな音楽を聴くためにはオーディオ機器が必要になり、
オーディオ機器が音楽と聴き手のあいだに介在することになる。
これは、これからさきどんなに技術が進歩していっても、オーディオ機器の「介在」がなくなることは、まずない。
音楽と聴き手の間に介在しているのはオーディオ機器だけではない。
そこには録音・再生のプロセスにともなうすべてのものが介在しているわけで、
ここで考えたいのは再生系におけるオーディオの介在であり、
再生系での音楽があり、聴き手がいて、オーディオ機器があるわけだが、
この3つの関係をどう並べるのか、以前、知人と話したことがある。
その知人はこの3つは三角形を形成する関係にある、という。
私は、というと、音楽と聴き手を結ぶ線の上にオーディオ機器が介在している──、
そういう位置関係にある、と話した。
どちらの考えが正しいのか間違っているのかではなく、これはその人のオーディオに対する考え方の違い、
オーディオを介して聴く音楽への考え方、というよりも接し方だろうか、その違いが表れてきただけのことだ。
ひとりは三角形(つまりは平面)を描き、ひとりは一本の線を描く。
私はオーディオ機器を、音楽と聴き手の間に介在すると位置づけてはいるが、
これはあくまでも「現状においては」ということであって、
望むのは、オーディオ機器は音楽の後に位置してほしい。
これも直線の関係である。
オーディオ機器は音楽の後にいて、音楽という風を聴き手に向けて興してほしい。
だが、実際には音楽と聴き手の間に、オーディオ機器はいる。