ハイ・フィデリティ再考(原音→げんおん→減音)
減音──、減りゆく音、減ってしまった音とすれば、それは録音系、再生系で失われていく音のこととなる。
マイクロフォンが空気の振動を電気信号に変換することから録音・再生のプロセスは始まるわけだが、
まずマイクロフォンが、その演奏の場にときはなたれた音のすべてを捉えているわけではない。
仮にマイクロフォンの振動板がとらえた音をなんの損失もなく100%電気信号に変換できたとしても、
マイクロフォンがすべての音を歪めずに拾えるとはいえない。
マイクロフォンには当然ながら、大きさがある。
どんな小さなマイクロフォンでもどこにマイクロフォンが設置されているのかすぐにわかる大きさはある。
マイクロフォンの中にも小さなモノもあれば比較的大きなモノもある。
つまりある大きさをもったモノが音を捉えるために設置されることで、
音の通り道の一部にマイクロフォンが立ちはだかっているのと同じことともいえる。
こんなことを考えるようになったのは、1980年ごろにアムクロン(クラウン)がPZMを出したからだ。
PZM(Pressure Zone Microphone)を、
(たしか無線と実験だったと記憶しているが)最初記事を読んだ時は、
なぜこういうマイクロフォンにする必要があるのか、なかなか理解できなかった。
私がPZMの記事を見かけたのは、その一回きりだったし、実際に使ったことはない。
録音においてどんな特徴をもつのかはわからない。
それでも、いまもクラウンがPZMを作りつぐけているということは、プロの現場で支持されているからであろう。
決してキワモノのマイクロフォンではないのだと思う。
実際のところはどうなのかはわからないが、私なりにPZMの形態とその使い方から考えると、
通常のマイクロフォンを通常の設置の仕方では、
音の波紋がきれいに拡散していくのを歪めてしまう可能性があり、
それを回避するためのモノとして登場してきた──、
そう思えてならない。