Date: 4月 17th, 2012
Cate: 井上卓也
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井上卓也氏のこと(その35)

アンプやCDプレーヤーなどの天板の振動をうまく抑えたいときがある。
そういうときにアセテートテープをつかったり、
ときにはアナログプレーヤー用のスタビライザーを乗せたりすることもあるわけだが、
あれこれ試してみて、
いちばんいい方法はアセテートテープを貼ることでもなくスタビライザーを乗せることでもなく、
自分の手を乗せることだった。

このことも井上先生に言ったことがある。
「手がいちばんいいですよね」と。「うん、そうなんだよ」という返事だった。

あくまでもこれは試聴だから使う方法であり、
自分の部屋で聴くときに常にアンプ、CDプレーヤーの天板の上に手を乗せてたりはしない。
だいたい聴取位置から手の届くところにアンプやCDプレーヤーは置いていないから無理なのだが。

ステレオサウンドでの試聴は椅子の前にヤマハのラックGTR1Bが4つあり、
そこにアンプやCDプレーヤーを置くわけだから、手を伸ばせばすぐに天板に手は届く。

自分の手だから振動を指先や手のひらから感じとれるし、耳では音を聴いている。
それに天板との接触面積もかなり大幅に変えられるし、
同じ面積でもぐっと力を加えれば重量を増すのと同じことになる。

しかも手の内部には骨がある。
いわば硬い芯があるわけで、このことも、
ただ硬いものを置いたり柔らかいものでダンプしたり、とは違う意味をもつ。

実際、井上先生は試聴中に天板の上に手を置かれていたし、
その置き方も置く位置も音の変化に応じて変えられていた。

そして井上先生はアンプの試聴の時、必ずボリュウムだけでなく、あらゆるツマミの感触を確かめられていた。

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