菅野沖彦氏のスピーカーについて(その8)
現在日本に輸入されているマッキントッシュのスピーカーシステムは、
XRT2K、XRT1K、XR200の3機種で、菅野先生が愛用されているXRT20とはずいぶん違った形になってしまった。
XRT20と型番上は同じXRTシリーズということになるのだろうが、XRT20と現在のXRT2K、1Kの共通点は、
トゥイーターの使用個数が近い、ということぐらいだと私は思う。
そのトゥイーターもXRT20はソフトドームを採用していた。
初期のXRT20はフィリップス製のソフトドーム型だったが、
事情により比較的早い時期からフィリップス製ではなくなっている(と聞いている)。
現在のXRT2K、1Kに使われているトゥイーターはチタン・ダイアフラムのハードドーム型である。
マッキントッシュのXRTシリーズを、
単にトゥイーターを多数使用したスピーカーシステムぐらいにしか捉えられない人にとっては、
ソフトドーム型だろうとハードドーム型だろうと、大きな違いはない、と考えるだろう。
けれど、ゴードン・ガウが、あえてソフトドーム型トゥイーターを24個使うことで実現したものは、
いったいなんだったのかを考えてみると、ハードドームかソフトドームかの違いは、
XRTシリーズの特徴的なトゥイーター・コラムの変えてしまう、とさえ思っている。
同じドーム型振動板をもつトゥイーターでも、
振動板が金属を使った硬い振動板のハードドーム型と樹脂系や布などの柔らかい素材のソフトドームでは、
振動板の動き・挙動はまったく同じとはいえない。
コーン型ユニットでも紙の振動板もあれば金属の振動板のユニットがあるけれど、
コーン型における振動板の素材の違いによる動作・挙動の違いは、
ドーム型における動作・挙動の違いに比べれば小さい、と考えられるのは、ユニットそのものの構造からくる。