音を表現するということ(続々・使いこなしについて話してきたこと)
そういうときオーディオマニアは、
もしかすると自分の音はかなりいいところまでいっているんじゃないか、と思うこともある。
自分の音に対して懐疑的な人であっても、そんな気持になるときはあるはず。
そうでなければ、オーディオはながく続けてはこれない、とも思うからだ。
この1年間、オーディオとひたすら取り組んできた。
最初は、ほんとうにひどい鳴り方しかしなかった音が、音楽が楽しめる鳴り方になってきた。
と同時に、これから先、どういうふうに取り組んでいけばいいのかが、
自分の中から湧いてこない状態にもなってしまったかのようでもある……、
「だから、一度音を聴きに来てほしい」という連絡があり、4月1日に行ってきた。
話を聞いて、音を聴かせてもらい、また話をしていた。
午後1時にその方をお宅を訪れて、9時半ごろまでいた。
本人だけでなく、奥さんもいっしょに私の話をきいてくれていた。
いくつか具体的なチューニングについて話してきたものの、
これだけの時間話してきても、まだまだ話したりないことのほうが多い。
それでも、ひとつだけくり返し言ってきたのは、
一度、いまのセッティング、これまでチューニングしてきたことをすべて崩して、
リスニングルームからすべてのオーディオ機器(ラックや置き台を含めて)すべてを一旦出して、
つまり部屋を空っぽにした状態で、もう一度、最初からセッティング、チューニングしてみることをすすめてきた。
これをやるのは、ほんとうに大変なことである。
ながい時間をかけて築いてきた音を、すべて解体してしまう。
そして「もう一度、一からやってみたらどうか」と私は言ってきた。