音を表現するということ(続×五・聴く、ということ)
音は、どこをいじったとしても必ず変化する。
その変化量や変化のベクトルは同じでないにしても、
音が変化しないということは──これは断言しておくが──、絶対にない。
こんなことでも音は変るのか……、と、ときには、その「発見」に喜ぶこともあるし、
またときには、こんなことで音は変ってほしくない、と思うこともある。
ちょっとやそっとのことでは音が変らない、そんなオーディオが欲しい気持はどこかにある。
それでも、音は変る。
にも関わらず、世の中にはオーディオを趣味としているといいながらも、
ケーブルを変えても音は変らない(この程度ならまだいいほうなのかもしれない)、
中にはアンプを変えても音は変らない、という人もいる。
実は、そういう人の音のきき方は、音の違いのみに意識を集中しているのではないか、と感じる。
音の変化を聴き分けるのだから、それでいいんじゃないか、といわれそうだが、
音を聴くということは、音の良さを聴きとろうとする行為であって、
それぞれのオーディオ機器の音の良さを感じとろう、聴きとろうという意識であれば、
音の違いは自然とわかってくるもの。