Date: 6月 30th, 2009
Cate: 黒田恭一
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黒田恭一氏のこと(その10)

Model 3に、アクースタット社が当時、サーボチャージアンプと呼んでいたモノは内蔵されていない。
外観も、Acoustat Xのほうが、まだカッコよかったと思うくらい、単なる板になっていた。
Acoustat Xからの5年間、アクースタットは何をやっていたんだろうと思ってしまうほど、
音が鳴っていないときのModel 3は、そっけない雰囲気のスピーカーだった。

試聴のあと、しばらくしてわかったことだが、Model 3のステップアップトランスは、
QUADや他社製のコンデンサー型スピーカーがひとつなのに対し、
アクースタットでは大小ふたつのトランスを使用している。

大きいほうは低域用、小さい方は高域用で、低域用のトランスと電極の間には抵抗が、
高域用トランスと電極の間にはコンデンサーが設けられ、
それぞれ高域カット、低域カットをしたうえで、合成した電圧を、固定電極へ加えている。

ステップアップトランスの、2ウェイ化である。
アクースタットでは、この方式をマグネ・キネティック・インターフェイスと名づけていた。

フルレンジ型のスピーカーユニットをつくるのと同じような難しさが、トランスにもある。
良好な低域の特性を得ようと、
インダクタンスを増やすためにコア・ボリュウムを増すと、高域特性が劣化しやすい。
トランスの巻線の浮遊容量による高域の劣化を減らすために、小さなコアを使えば、
巻線の長さも短くなり、線間容量も同時に減るが、インダクタンスの確保が難しい。
つねにシーソーのような相関関係にある。

アクースタットは、Acoustat Xで、トランスレスを実現することで、
トランス介在による問題点をはっきりと把握していたのだろう。
Acoustat Xが存在していたからこそ、生れてきた発想であり、
答えがマグネ・キネティック・インターフェイスなのだろう。

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