「異相の木」(その4)
ひとつの空間(リスニングルーム)には1組のスピーカーシステム。
複数のスピーカーシステムを鳴らしたいのであれば、スピーカーシステムの数と同じだけの部屋を用意する。
ひとつの空間に複数のスピーカーシステムを置く。
どちらも複数のスピーカーシステムを所有しているわけだが、
それだけでは「異相の木」と呼べるスピーカーシステムがあるわけではない。
1970年代には、ジャズはJBLのスピーカー、クラシックはタンノイのスピーカー、といったことがいわれていたし、
そのころのオーディオ雑誌のリスニングルーム訪問記事をみると、
JBLとタンノイの両方を所有されている人は珍しくなかった。
タンノイとJBLとでは、片方はクラシック向き、もう片方はジャズ向きと当時はいわれていたように、
音の傾向は大きく異っていた。
ならば1970年代当時、タンノイとJBLの両方のスピーカーシステムを使っていれば、
そしてどちらかをメインのスピーカーシステムとしていれば、もう片方は「異相の木」と呼べるのだろうか。
スピーカーの方式にはいくつもある。
コーン型、ホーン型、ドーム型、コンデンサー型、リボン型などがあり、
振動板の材質にしても紙、金属、布、樹脂などいくつもあり、それぞれに物性が違う。
タンノイとJBLでは、どちらもウーファーはコーン型で、中高域はホーン型という共通性があるから、
タンノイ、JBLのところに、たとえばコンデンサー型のスピーカーシステムをもってきたら、
それは異相の木だろうか。
古いスピーカーシステムを愛用してきた人が、最新のスピーカーシステムを加えた。
反対につねに最新のスピーカーシステムばかりを選択してきた人が、古いスピーカーシステムを加えた。
新しいスピーカーシステムと古いスピーカーシステムの両方を所有して鳴らす。
この場合、新しい(古い)スピーカーををメインとすれば、古い(新しい)スピーカーは異相の木なのか。
オーディオにおける「異相の木」はそういうものではないはずだ。