Date: 1月 22nd, 2012
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オーディオ機器との出逢い(その6)

田舎に住んでいたころは、東京に憧れていた。
はやく上京したい、と思っていた。その理由は、もちろんオーディオ。

東京にはいくつものオーディオ店があって、田舎出は聴くことのできないオーディオ機器を聴ける。
それにメーカーのショールーム(とくに西新宿にあったサンスイのショールーム)もある。
毎年秋には、晴海でオーディオフェアをやっている。

東京に住まいのある人が羨ましく思えた10代だった。

そのころまわりにはオーディオマニアはいなかった。
東京のような環境ではなかった。
だからこそ、文章による「出逢い」をいつしか求めるようになっていったのかもしれない。
それに、そういう私の欲求に応えてくれる人たちが、あのころはいた。

タンノイ・オートグラフ、マッキントッシュMC275、EMT・930stは五味先生の文章によって、
JBL・4343、マークレビンソンLNP2、KEF・LS5/1A、グッドマンAXIOM80、
それにもう一度930stは瀬川先生の文章によって、
そのほかにもいくつかあるオーディオ機器は、このころ、そういう「出逢い」をしてきた。

タンノイのオートグラフが名器と呼ばれるのは、なにも五味康祐氏が使っていたからではない、
4343が名器なのは瀬川冬樹氏が使っていたからではない、
オートグラフも4343も優れたオーディオ機器であったからこそ、名器と呼ばれている。
──こういった主旨のことをいわれたことがある。

そのとおりだ、と私も思う。
それでも、あえて反論した。
オートグラフも4343も、ここに書いてきた「出逢い」を私はしてきたからだ。

そうやって出逢ってきたオーディオ機器は、人と、いまでも分かちがたく結びついている。
もう切り離すことはない、と言い切れる。

そんな私にとって、オートグラフは五味先生が愛用されていたから、
五味先生をあれだけ夢中にさせ、あれだけの情熱を注がせたから「名器」であり、
4343、LS5/1Aにしてもそうだ。ここには瀬川先生が、いる。
JBLのパラゴン、D130には、岩崎先生が、いる。

私にとって特別なオーディオ機器には、つねに「人」がいる。

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