「オーディオ」考(その11)
なぜ、そのような使い方をするのか。
その前に、同じJBLのスピーカーシステム、ハークネスのことを書きたい。
ハークネスは、いまでも「欲しい!」という気持がつづいている。
ステレオサウンド 45号の連載記事「サウンド・スペースへの招待」を読んだときから、
ずっとその気持は続いている。
ときに強くなったり、かすかになったりしながらも、1977年から持ち続けている気持だ。
この号の「サウンド・スペースへの招待」の副題には「木に薫るハークネス」とついている。
紹介されているのはデザイナーの田中一光氏のリスニングルーム。
このときの田中一光氏のシステムは、
スピーカーシステムは、もちろんJBLのハークネス(001 System)、
コントロールアンプはマッキントッシュのC22とマークレビンソンLNP2L、パワーアンプはマランツの510M、
プレーヤーはヤマハのYP800でカートリッジはピカリングXSV/3000。
ステレオサウンド 45号が手元にある方はぜひひっぱり出して見てほしい、と思う。
こんなにハークネスが見事に部屋に収まっているのを見た14歳の私は、ずっと憧れてきた。
ハークネスというスピーカーシステムは、美しい、と思う。
けれど、他のJBLのスピーカーシステム、
たとえばハーツフィールド、パラゴン、オリンパスと比較すると、
エンクロージュアはバックロードホーンではあるものの、サランネットをつけた状態ではそのことは判らない、
四角い箱でしかない。
金属製のテーパーのついた細い脚、
シックなサランネットもフラットではなく中心から両端にかけて奥に引っ込んでいる。
JBLのスピーカーシステムの中で、モダーンデザインの成功例だと思う。
そういうハークネスだから、
ハーツフィールド、パラゴン、オリンパスに見られるような家具的要素・側面は希薄であり、
通常のスピーカーシステムと同じように内側に振って設置するという使い方もある、と思うし、
田中一光氏の、見事な使い方もある。
田中一光氏のハークネスの使い方は、家具として扱われている。
そのことを意識されていたのかいなかったのかは、「サウンド・スペースへの招待」を読んでもわからないが、
氏のリスニングルームの写真を見れば、
ハークネスが家具として、あるべきところに収まっている、としかいいようがない。