Date: 12月 13th, 2011
Cate: 「オーディオ」考
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「オーディオ」考(その3)

1週間前の12月6日は「音の日」だった。
1877年のこの日、トマス・アルヴァ・エディソンがフォノグラフ(phonograph)を完成させ、実験を行っている。
このときエディソンが「メリーさんのヒツジ」を歌ったことはよく知られている。
エディソン以前はどうだったかといえば、
レコードとレコードをつくり再生する仕組みの発明はなされていて、
それらいくつかの発明の中でもフランスのシャルル・クロによるパルレオフォン(parléophone)は、
歴史のいたずら(というよりパリの科学アカデミーの怠慢ゆえに)によって放っておかれ、
伝えられている日付が事実なら、このパルレオフォンこそが世界最初の蓄音器になっていたであろう。

とはいうものの、一般的認識としては、オーディオはエディソンの蓄音器、フォノグラフから始まっている。

エディソンのフォノグラフは、これ一台で録音・再生ができていた。
だから「メリーさんのヒツジ」をエディソンが歌った直後に、
フォノグラフからエディソンの声による「メリーさんのヒツジ」が聴こえてきたわけだ。
この事実が、実験に立ち合った人の何人かを、
発狂しそうなくらい驚かせたことに、深く関係している、と思う。

1877年当時の人たちにとってフォノグラフは、1877年までに存在していた他の器械とは違う、
理解しにくい、得体のしれない、からくり仕掛けの物体として映ったのかもしれない。
そうだとしたら、オーディオは最初はからくり仕掛けの器械だった──。

シリンダー状(錫箔管)だったエディソンのフォノグラフは、
その後ドイツ生れのエミール・ベルリナーの発明(1887年)、
グラモフォン(gramophon)にとって代わられることになる。
いうまでもなくベルリナーのグラモフォンは、現在のレコードの原型といえるディスク(円盤)状のもので、
エディソンのフォノグラフが形状的に持っていた、
複製をつくるのができない短所(欠点)を解消している。

原盤をつくり、あとはそのコピーを大量生産する、という目的にはディスク(円盤)は最適の形状といえるものの、
外周と内周とで線速度の違いから音質の差が生じる。
エディソンのフォノグラフでは、この問題はおこらない。
それに不確かな記憶で申しわけないが、ベルリナーのグラモフォンは再生だけだった、と思う。

ここから、エディソンのフォノグラフではひとつだった録音と再生が分かれてくことになる。

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