オーディオの「本」(その18)
1980年代はAV(Audio Visual)と呼ばれていたのが、いまではホームシアターになってしまった、
これはオーディオから派生したものではなくて、やはり別種の似たところのあるもの、と思う。
オーディオもホームシアターも家庭内で、プログラムソースを再生する。
オーディオは音のみ、ホームシアターはそこに映像もある。
AVとまだ呼ばれていたころは映画もだったけれど、
それと同等かときにはそれ以上に音楽もののプログラムソースが目立っていたように感じていた。
まだDVDなどはなく、ディスクのフォーマットとしてレーザーディスクとVHDがあり、
ビデオテープではVHSとβがあったころは、私の印象としてはそんなふうだった。
もっともテレビをずっと持たない生活を送っている私の、映像モノに対する記憶だから、
たまたま個人的に関心をもったのがそうであっただけで、全体としての印象は違うのかもしれないけれど、
それでも音楽もののがAV関係の雑誌で取り上げられることもいまよりも多かったのではないだろうか。
それがいつのまにかホームシアターと呼ばれるようになり、
映画ものの発売枚数は、AVの呼ばれていた時代よりも急速に増えていったような気がする。
音楽ものもけっこうリリースされているのは知っている。
でもAVと呼ばれていた時に観た作品を、もういちどDVDで出ていないか調べてみると、
不思議になかったり、
出ていたとしてもほんのわずかな期間だけでそれほど以前のことでもないのにすでに廃盤だったりするから、
よけいにそんなふうに感じているだけ、ともいえよう。
こんな私の印象はどうでもいいことで、いまはホームシアターということになっている。
いうまでもシアターはTheaterで、劇場、映画館であり、映画館は映画を上映するところであり、
劇場はここにコンサートホールも含まれるのかもしれないが、やはり劇場は演劇を上演するところである。
ということはホームシアターは、家庭内劇場、家庭内映画館ということになる。
ホームシアターという語感から、家庭内コンサートホールはイメージしにくい。
いま私はホームシアターをそういうふうに受け取っていて、
その受け取り方のなかで、ホームシアターにおける「現場」について考えると、こちらはすんなり浮んでくる。