2011年ショウ雑感(続々続々・余談)
現在市販されている、
そしてこれまでに市販されてきたスピーカーのほぼすべてはピストニックモーションによっている、といえる。
それはホーン型であろうとコーン型、ドーム型であろうと、さらにリボン型、コンデンサー型であっても、
ピストニックモーションによって音を出している。
つまり振動板が前後にできるだけ正確に、余分な動きをせずに振動することである。
その実現のためにコンデンサー型やリボン型は振動板全体に駆動力がかかるようにしているし、
振動板全体に駆動力がかからないコーン型やドーム型では、
振動板の素材に、できるだけ軽く硬く、内部音速が速いものを採用している。
けれどスピーカーの動作としてピストニックモーションだけがすべてではなく、
何度か書いているようにドイツではかなり以前からベンディングウェーヴによるスピーカーがつくられてきている。
私はAMT型はピストニックモーションでないことは明らかだし、
その意味でベンディングウェーヴの一種だと認識している。
AMT型ではリボン・フィルムをひだ(プリーツ)状にしている。
この振動板が前後に振動して音を出しているのであれば、AMT型もリボン型の変形・一種といえることになるが、
ADAM社のサイトにある説明図をみても、
それにスピーカーの技術書に載っているハイル・ドライバーの説明図をみてもわかるように、
プリーツ状の振動板が前後に動いて音を出しているわけではない。
ピストニックモーションはしていない。
ここで理解しにくいところなのかもしれない。
私もハイル・ドライバーの説明図を最初みたとき(10代なかばのころ)、
世の中にはピストニックモーションしかないと思っていたため、
すぐにはなぜ音が出るのかすぐには理解できなかった。
ピストニックモーションのほかにベンディングウェーヴがあるということがわかっていれば、
すぐに理解はできたのかもしれないが、
でもおそらく、そのころはベンディングウェーヴを理解することが難しかっただろうかから、
結局は同じことで、すぐには理解できなかったかもしれない。
私がハイル・ドライバーの動作を理解できたのは、入浴中のときだった。
なにげなく左右の手を組んで水鉄砲をやっていて気がついた。
ハイル・ドライバー、つまりAMT型はプリーツ状の振動板をアコーディオンのように伸縮させることで、
プリーツの間にある空気を押し出す。
それは両手の間にある水を押し出すのと同じことである。
これに対してピストニックモーションは手のひらを広げて前に押し出すようなもの。
これは正確な例えではないけれど、AMT型の動作を理解するに好適な例だと思う。
風呂場やプールで手による水鉄砲をやってみれば、
ADAMがAMt型のユニットにX-ART、Accelaratingとつけた理由が理解できるはずだ。
ADAM社のサイトの説明図には矢印がいくつかある。
そのなかの細い矢印は、フレミング左手の法則の、磁界の方向(赤の矢印)、電流の方向(紫の矢印)、
力の働く方向(緑の矢印)をあらわしている。
ピストニックモーションのスピーカーでは力の働く方向がそのまま音の出ていく方向であるのに対して、
X-ART型はそうなっていない。音の出ていく方向と直交している。
ピストニックモーションとベンディングウェーヴについては、まだまだ書きたいことがあるけれど、
別項で書いていくことになると思うので、ここではこのくらいにしておく。
すこし長くなってしまったが、ADAMのX-ARTはあくまでもAMT型ユニットであり、
リボン型、もしくはその変形、一種ではないことはご理解いただけたのではないだろうか。