Bösendorfer VC7というスピーカー(その23)
スウェーデンのプロプリウスから発売されている「カンターテ・ドミノ」が録音されたのは1976年、
テープレコーダーはルボックスのA77で、ワンポイント録音。
A77は、スチューダーのプロ用機器とは違い、あくまでコンシューマー用のデッキ。
それで録音されたものが、いまでも優秀録音の一枚として、いまでも試聴レコードとして使われている。
2008年のインターナショナルオーディオショウでのノアのブースでのベーゼンドルファーVC7が鳴らされたときも、
「カンターテ・ドミノ」が使われていた。
VC7を鳴らすためのディスクを選んでいたのは、VC7の開発者だった。
実は、このときのVC7の音を聴いて、さらに惚れ込んでしまった。
VC7からの「カンターテ・ドミノ」の響きには、木の響きが感じられたからだ。
欧米の教会が身近にない環境で育っているためか、
「教会」ときくと、テレビや映画によく出てくるような石造りの建物を私などは連想してしまいがちだが、
「カンターテ・ドミノ」の録音に使われた教会は、そういう石造りの教会ではなく木造りの教会だ。
だから、「カンターテ・ドミノ」では、そういう木造りの教会の響きがしてこなければ、おかしいということになる。
石造りの教会を連想させる響きでは、「カンターテ・ドミノ」を十全に再生できた、とはいえないことになる。
井上先生は、よく「カンターテ・ドミノ」を試聴に使われた。
「カンターテ・ドミノ」で何度もかけながら細かい調整をされていく。
すると、途中であきらかに響きの質が変化するときがある。
響きがあたたかくやわらかい感じになる。
このことを井上先生にきいてみると、「それは木の教会だからだよ」と教えてくれた。
VC7の開発者も、同じことを言っていた。