Date: 8月 18th, 2011
Cate: アナログディスク再生
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私にとってアナログディスク再生とは(その29)

TX1000の実物を見たとき、おそらく他の方もそうだと思うが、「でかい」と口走りそうになった。
しかも横に長いプロポーションで、四隅に脚がはみ出すようにはえている。
操作ボタンを集中させてコントロールボックス(パネル)がやはり本体から飛び出している。
しかもそのスイッチは、ナカミチのカセットデッキ的なものだった。

レコードの芯出し機能を何度か試して、その効果を楽しんだ後は、
もう一度しげしげとTX1000をながめると、これをレコードを鳴らすモノといっていいのだろうか、と思えてくる。
ナカミチは、レコードをカセットテープのように捉えていたのではないか、とさえ思う。

カセットテープは、音が記録されているテープそのものには手がふれない。
手がふれるのは、あくまでもケースの部分だけ。
この点で、同じテープデッキでも、オープンリールデッキと異る。
オープンリールデッキでは、直接テープを指でつまみ、キャプスタン、テープヘッドのあいだを通していく。
レコードも、レコードそのものを手でふれる。

ナカミチがオープンリールデッキをつくっていたのは知っている。
けれどカセットデッキに集中しすぎて、この感覚をどこかに忘れてしまっているように思えてならない。
有機的な質感のレコードとは正反対の無機的な質感のTX1000を、カッコイイと感じる人はいるだろうが、
私は、TX1000の外観は拒否したい、と感じる人間だ。

ナカミチはTX1000の普及モデルとしてDragon-CTを出した。
TX1000とは大きさも見た目もかなり変ったが、
それでも、愛聴盤を、このプレーヤーで鳴らしたいという雰囲気はやっぱりなかった。

TX1000は試みとしてはユニークなものがあったが、決して成功したとはいえない。
TX1000をお使いになっている方には申し訳ないが、TX1000は試みだけで終ってしまっている。

なぜか。
それは10秒間という芯出し作業にかかる時間、無機的で大きすぎる外観、
芯出しの効果は音としてはっきりと聴きとれるものの、
それ以前のアナログプレーヤーとしての基本的な素性、音を含めての性能にも不足を感じるものだった。
それにレコードの芯出しは、短期間に集中してくり返しやって鍛えていくことで、
ある範囲内におさめることはできるようになる、ということも理由としてある。
あともうひとつあった、レコードがかけにくいのだ。

ナカミチに、オーディオのことを感覚的な面でもしっかりと理解しているデザイナーがいてくれてたら、
TX1000は、まるで違う形になっていたであろうし、評価も大きく変っていた……、とつい思ってしまう。

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