BBCモニター考(余談・続×十八 K+Hのこと)
部屋に残響特性がなかったとしたら、
ようするに無響室で聴くのと同じことだから部屋とスピーカーシステムとの相性は存在しなくなる。
でも、誰ひとりとして無響室でスピーカーと向き合って音楽を聴きたいと思っている人はいない。
スピーカーシステムの累積スペクトラムは、スピーカーシステム残響特性だと書いた。
あるスピーカーシステムの累積スペクトラムで、
たとえば100Hzあたりの減衰がなかなかおさまらずに、しかもうねったような感じになっていたら、
そしてそのスピーカーシステムを設置した部屋に100Hzの強烈な定在波が発生していたら……。
部屋の悪いところ、スピーカーシステムのそういう悪いところが一致したら、どうなるかは容易に想像がつく。
ならばスピーカーシステムの累積スペクトラムが、K+HのO500Cのように見事な特性だったら、
部屋のクセがスピーカーのクセを強調するということはなくなる。
それで、その部屋固有の響きが消えてなくなるわけではないけれど、
部屋の悪さがスピーカーシステムによってことさら強調されることはなくなるはずだ。
結局、音が鳴り止んでも、つまりアンプからの入力がゼロになっても、
どんなスピーカーシステムでも、ほんのわずかとはいえ、ユニットからエンクロージュアから音が出ている。
この音が尾を引くようなスピーカーシステムは、部屋の影響を受ける、というか、
部屋の悪さと相乗効果を起しやすいため、場合によっては手がつけられなくなる。
この問題点は、グラフィックイコライザーで、
その問題となっている周波数をぐっとレベルをさげたところで解消されることはない。
グラフィックイコライザーだけでなく、パラメトリックイコライザー、トーンコントロールも含めて、
電気的に周波数特性を変化させることで解消できることはあるし、うまく作用するところもある。
けれどそうでないところも確実にある。
どんなにいじっても電気的には解消できない問題点がひどく発生することもあるし、
そういう電気的な周波数変化でいじってはいけないところがある。