妄想組合せの楽しみ(その45)
ユニゾンリサーチのP70の出力管をKT88に換えたい、というと、
五味先生の影響だろう、と思われ方もいらっしゃるかもしれない。
五味先生はタンノイ・オートグラフをマッキントッシュのMC275で鳴らされていた。
いうまでもなくMC275の出力管はKT88である。
ただ晩年は、カンノ製作所の300Bのシングルアンプにされることも多い、と、
新潮社から出た「人間の死にざま」の中で書かれている。
MC275のことがまったく頭にない、といえば、それはウソになるけれども、
私がステレオサウンドの試聴室やそれ以外の機会で聴くことができたタンノイのスピーカーシステムと、
管球式のパワーアンプの組合せを振り返ってみると、偶然、というか、できすぎ、いおうか、
KT88のパワーアンプが圧倒的に多かった。
マイケルソン&オースチンのTVA1がそうだし、ジャディスのJA80などが、MC275とともに浮ぶ。
もちろん、このことは私が聴き得た範囲内のことであり、
私がタンノイに求めている音のイメージからそう判断していることにしかすぎないのだが、
あえて言わせていただければ、タンノイにはビーム管が合う、と。
だからビーム管(6550A)を採用したP70を、EL34(5極管)のP40ではなく、組み合わせたいと思ったわけだ。
そしてさらに、良質のKT88が入手できれば……という条件つきになってしまうが、
6550AからKT88に差し換えてみたいなぁ、と思ってしまうのは、
私が興味をもつ以前、
タンノイのIIILZとラックスのSQ38FDとオルトフォンのSPUは黄金の組合せ、といわれていた。
黄金の組合せの音は聴けずにここまできてしまったけれど、
そう表現したくなる組合せを、
当然のことながらタンノイのスピーカーシステムを使ってつくってみたい、と思っていた。
だからP70の登場を知ったとき、これは意外にもヨークミンスターとで黄金の組合せになってくれるかもしれない、
そういう、なんら根拠のない可能性を勝手に感じているだけの話でもある。