Date: 7月 25th, 2011
Cate: 瀬川冬樹
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確信していること(その19)

「コンポーネントステレオの世界 ’80」でつくられた組合せの音について、どう語られているを拾っていくと、
まず4343の、予算400万円の組合せでは、当時、自宅で愛用されていたものでの組合せということもあってか、
最終的な音に関しては、あまり語られていない。

まず「日常的に聴いている音ですから、満足していますというよりいいようがない」と言われ、
つけ加えるように、
「満足していながら、いわばないものねだりみたいなところもあるんです。たとえば、このままの解像力で、
このままの透明感をたもちながら、また質感をたもちながら、そこにいま以上の豊麗さ、
それから色っぽさみたいなものが出てきてほしいといったような……」と。

アルテックの620Bの組合せは、4343の組合せの予算の半分、
その音については、「かなり享楽的な色彩をもっているのです。爛熟した、といいたいほど、熟した感じの音で、
リッチな音といってもいいかもしれません」と語られたうえで、
「こういう感じの音は、以前のぼくは、どちらかというと敬遠していたわけですが、なぜか最近好きになってきた。
好きになったというより、積極的に憧れるようになってきたんでね(笑)。」

言葉の上であっても、4343の組合せと620Bの組合せは、音の世界としては共通しているところうもちながらも、
そこから違う方向に分岐した、それぞれに良質の音といえ、
4343の組合せに対して、こういう音が出てくれれば、と求められているところを、620Bの組合せは特長としている。

この620Bの組合せの印象は、パワーアンプにアキュフェーズのP400なのか、
ミカエルソン&オースチンのTVA1なのか、はっきりと書かれていないが、全体の音の印象から判断すると、
TVA1で鳴らされた音と受けとっていいだろう。

TVA1の音について語られているところを引用しておく。
     *
こうしたアンプというのは、いままで日本とアメリカでしか見られなかったのですが、イギリスからも登場したというところが、興味ぶかいと思うのです。アンプというのはじつに面白いなと思うのは、エレクトロニクスでコントロールできそうな機器であるにもかかわらず、きわめてデリケートなところで、日本とアメリカとイギリスの製品では、音のニュアンスとか味わいにちがいが聴かれることですね。
このTVA1という管球アンプも、アメリカのものとも日本のものともちがっていて、どこか渋い、くすんだ色調の、そしてたいへん上品な味わいの音をもっています。しかも、いまイギリスのアンプを代表しているQUADの、贅肉を抑えた、潔癖症の音の鳴り方とは、まるで正反対の、豊かな肉づきの、たとえていえば充分に熟成した果実のような、水気をたっぷりとふくんだ音とでもいいましょうか、そういったイメージの音を聴かせてくれるのです。

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