40万の法則が導くスピーカーの在り方(その15)
田口泖三郎博士によれば、
人間の口をポカンとあけた時の口の中の共鳴周波数が大体630Hzだという。
もちろん個人差は多少あるものの平均値として630Hzあたりに落ちつくとのこと。
田口博士の研究は、なぜ人間は20Hzから20kHzまでが聞こえるか、ということだったらしい。
そして口の共鳴周波数630Hzを中心として、上下の帯域に均等に広げていった結果が、
一般的にいわれている20Hzから20kHzといわれている可聴帯域となり、
これを対数グラフで表わすと、20Hzから20kHzという周波数特性は、
約630Hzを中心として左右対称に広がったかたちとなる。
つまり40万という値は、この630Hzを二乗した値ということになる。
この630Hzという数字が、40万の法則によるスピーカーシステムを考えていく上での基点であり、
もうひとつのスピーカーシステムを在り方を発想させる。
630Hzを中心にして上下の周波数に均等に帯域幅を広げていくのに、
フルレンジから発想したのがいままで述べてきたBWTを中心としたスピーカーシステムであり、
630Hzを中心としてできるだけ、単一のユニットで広い帯域を受持ち、
それだけでは及ばない上下の帯域をウーファーとトゥイーターを附加する、というもの。
630Hzを中心にして均等に広げていく、という、このことをどう解釈してどう実現するかだが、
ベンディングウェーヴのユニットを使っても、
いまのところフルレンジ1本ではカヴァーできる範囲はまだ限られている。
ウーファーとトゥイーターを必要とする。
このウーファーとトゥイーターは振動板の口径も大きく異るし、
ウーファーはコーン型、トゥイーターはベンディングウェーヴならAMT、
ピストニックモーションならばホーン型、ドーム型、リボン型、コーン型などになる。
ウーファーとトゥイーターは、いわば違うユニットであり、これでは均等に広げたということになるのか、
という捉え方ができ、結局100Hz以下の低音と4kHz以上の高音では、波長も大きく異っているし、
どうせ異るスピーカーユニットを使うことになるのだからいっそのこと、
630Hzをクロスオーバーとした2ウェイのスピーカーシステムも考えられる。
630Hzなら、38cmコーン型ウーファーとホーン型との組合せであれば、実現できる。
少し前のスピーカーシステムではあるが、パイオニアのExclusive 2402、2404がすぐに頭に浮ぶ。
Exclusive 2402、2404、どちらもクロスオーバー周波数は650Hzである。
クロスオーバー周波数が700Hzとすこし高くなってしまうし、
ややユニットの使い方がExclusive 2404からすると複雑というか変則的になるが、JBLのDD66000がある。