40万の法則が導くスピーカーの在り方(その14)
ここで話は前にもどる。
40万の法則そのものに関しては、もういちど書くことにする。
一般的に40万の法則は、人間の可聴帯域の下限(20Hz)と上限(20kHz)の積が40万になるからだ、
といった説明がなされてきているが、人によって可聴帯域は異る。
同じ人間でも年齢によって高域が聴こえなくなるから可聴帯域は変化していく。
高域が聴こえなくなってきたら、40万の法則にしたがって、
下限の値(低域の再生域)も変えていかなければならないのか。
これは考えていくと、どうもおかしいと感じる。
ということは、40万の法則そのものが間違っているのか、ということになるのか。
そうとは、どうしても思えない。
3ウェイ・システムにおいてスコーカーの受持ち帯域も40万の法則どおりにする、ということを考えていると、
40万の法則は、上限と下限の積から導き出されたものではなく、
じつは別のところから導き出されたものではないか、と思える。
4ウェイの4343のミッドバスがほぼ40万の法則どおり、
3ウェイでは、100Hzから4kHzをスコーカーに受持たせることで、ここも40万の法則。
つまり4343のミッドバスと、BWTの3ウェイのスコーカーで共通するのは、その中心周波数である。
632.455Hz、約630Hzがそれにあたる。
この630Hzを受持つユニットの上限と下限を均等に広げていくことが、
そのユニットの受持ち帯域が40万の法則どおりになるわけだ。
この630Hzがもつ意味については、瀬川先生の「虚構世界の狩人」「オーディオABC」、
どちらかを読んだことのある人なら、この630Hzの数字とともに、田口泖三郎博士の名前も思い出されるはず。